商圏分析のやり方|一次・二次・三次商圏の設計と販促への落とし込み

ゴールデンアワーの和の商店街を俯瞰し、中央の一軒の店から街路が放射状に伸びる様子。商圏分析のイメージ

"商圏分析は半径円を引いて人口を数える作業ではありません。一次・二次・三次商圏を距離・時間・実勢の3つの見方で設計し、読んだ商圏を『誰に・どの導線で・何を訴求するか』の販促仮説へ翻訳するまでを、無料の統計・GIS・ハフモデルの使いどころとあわせて型で解説します。"


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商圏分析の解説記事の多くは、地図に半径3kmの円を引き、その中の人口を数えるところまでを「やり方」として説明します。ツールの使い方やデータの探し方は丁寧でも、肝心の「読んだ商圏を、どんな販促の打ち手に変えるのか」は「活用しましょう」の一文で終わりがちです。けれど実務で価値が出るのは、まさにその翻訳工程です。

結論を先に置きます。商圏分析とは、来店する可能性のある顧客が地理的にどこまで広がっているかを画定し、その範囲の人口・競合・行動特性を読んで、「誰に・どの導線で・何を訴求するか」という販促仮説に翻訳する作業です。円を引いて人口を数えるのは入口にすぎません。この記事では、一次・二次・三次商圏の設計から、無料で使える統計・GIS・ハフモデルの使いどころ、そして商圏を打ち手に翻訳するまでを、順に型として整理します。

なお、商圏設計を含むエリアマーケティング全体の地図(商圏・集客・販促・効果測定をどう連結するか)は、上位の解説記事エリアマーケティングとは|店舗集客と商圏設計の実務にまとめています。本記事はその中の「商圏の読み方」を1段深掘りした入口記事です。

商圏分析のやり方(全体の7ステップ)

細かい手法に入る前に、全体像を手順で置きます。商圏分析は、次の7ステップで進めると迷いません。多くの解説記事はステップ5(レポート化)までで終わりますが、実際に成果を左右するのはステップ6と7です。

  1. 目的を決める——新規出店か、既存店の改善か、販促の最適化か。目的によって引くべき商圏もそろえるデータも変わります。
  2. 新規店か既存店かを分ける——既存店なら自社の来店データ(実勢商圏)が使えます。新規店なら距離・時間商圏で仮説を立てるところから始めます。
  3. 商圏を仮設定する——距離(同心円)・時間(到達圏)・実勢の3つの見方から、業態に合う引き方を選びます(本文「一次・二次・三次商圏の引き方」)。
  4. 公的統計を流し込む——国勢調査・経済センサスを無料のe-Stat/jSTAT MAPで投入し、母数と客層の骨格をつかみます(本文「商圏データの集め方」)。
  5. 競合と人流で補正する——ハフモデルや勢力分析で競合の吸引力を織り込み、人流データで行動を補います(本文「ハフモデルと勢力分析の使いどころ」)。
  6. 販促仮説に翻訳する——「誰に・どの導線で・何を訴求するか」に落とします。ここが本番です(本文「商圏分析を販促仮説に翻訳する」)。
  7. 効果測定を設計する——打った後に交絡(天候・季節など)を切って効果を測り、次のサイクルへ回します。

以下、各ステップの勘どころを順に見ていきます。

一次・二次・三次商圏の引き方(距離・時間・実勢の3つの見方)

商圏は普通、来店頻度と距離に応じて3層に分けます。数字は業態で動くので目安ですが、考え方は共通です。

  • 一次商圏:来店客の主力(おおむね5〜7割)を占める、店にもっとも近い層。日常的に何度も来る距離。
  • 二次商圏:一次の外側で、週に1回〜月に数回の頻度で来る層。
  • 三次商圏:さらに外側で、月1回以下・目的があるときだけ足を運ぶ層。

問題は「この3層をどう引くか」です。ここで多くの記事が半径(距離)だけで片付けますが、商圏の引き方には性質の違う3つの見方があり、業態によって使い分けます。

距離商圏(同心円)

店を中心に半径○kmの円を引く、いちばん単純な方法です。地図に描きやすく、大まかな規模感をつかむ初期段階には有効です。ただし円は「直線距離」でしか世界を見ないため、現実の来店行動とはずれます。「半径何kmが正解か」という問いに単一の答えはなく、業態で大きく変わります。 コンビニや飲食のような最寄り立地は半径数百m〜1km台、食品スーパーで数km、家具・家電のような目的来店型はさらに広がります。同心円は「たたき台」であって「結論」ではない、と押さえてください。

時間商圏(到達時間圏)

「徒歩○分」「車で○分」で到達できる範囲を引く方法です。人は距離ではなく移動の手間で来店を決めるので、実際の来店行動には距離商圏より近くなります。幹線道路沿いなら車で10分の円は縦に細長く伸び、鉄道駅前なら徒歩商圏が路線に沿って歪みます。この到達圏は、後述する総務省の無料GIS「jSTAT MAP」でも扱えます(到達圏の作成条件は最新の操作マニュアルで確認してください)(e-Stat 統計GIS)。

実勢商圏(実際の来店データから引く)

自社の顧客データ(会員登録の住所、POSと紐づく決済データ、アプリの位置情報など)から、「実際にどこから来ているか」を地図に落として引く商圏です。これがもっとも真実に近い商圏で、円や時間圏はこの実勢商圏を近似するための代理にすぎません。実勢商圏を見ると、地図上では近いのに川・線路・大きな幹線道路で分断されていて客が来ない方角や、逆に遠いのに動線がつながっていて客が来る方角が見えてきます。既存店があるなら、まず実勢商圏を引くのが最短です。

[型としての整理]距離商圏=手軽だが粗い/時間商圏=行動に近い/実勢商圏=もっとも正確だがデータが要る。新規出店で自社データが無いときは距離・時間商圏で仮説を立て、既存店では実勢商圏で答え合わせをする、という順で使い分けます。3つは対立する手法ではなく、精度とデータ量のトレードオフの上に並んでいます。

商圏データの集め方(無料の公的統計から自社POSまで)

商圏の器を引いたら、中身のデータを流し込みます。有料GISを契約しなくても、土台は無料の公的統計でかなり組めます。

国勢調査(総務省統計局)は5年ごとに実施される国の最も基本的な統計で、直近は令和7年(2025年)、その前が令和2年(2020年)です(統計局 国勢調査)。令和7年の結果は速報から順次公表される段階なので、町丁・字レベルの小地域集計を商圏実務で使うなら、当面は公開済みの令和2年小地域集計を土台にして、推計人口や自社データで補正するのが現実的です(令和2年国勢調査 小地域集計)。小地域集計を使えば、商圏内の人口・世帯数・年齢構成・世帯人員を細かい単位で取れます。これが商圏の「母数」と「客層の骨格」になります。

経済センサス(総務省・経済産業省)は、事業所・企業の経済活動を全国で捉える統計です(統計局 経済センサス)。商圏内に同業種の事業所が何件あり、従業者がどれだけいるかを産業別・地域別に把握できるので、競合の密度をつかむ土台になります。ただし特定チェーンの競合店を個別に名指しで抽出する用途には設計されていない点は押さえてください。個店リストが要るなら地図データや現地調査で補います。

これらはe-Stat(政府統計の総合窓口)で誰でも無料で取得でき、地図上で見る「統計GIS」機能も備えています(e-Stat)。中でもjSTAT MAPは、登録なしでも統計データの地図表示やエリア集計が使える無料のGISで、無料のユーザー登録をすると、指定エリアの年齢別人口・世帯数・経済センサスなどを盛り込んだレポート(リッチレポート)をExcelで出力できます(e-Stat 統計GIS)。「まず何を触ればいいか分からない」段階なら、jSTAT MAPで自店周辺のエリアを設定してリッチレポートを出すのが最短の第一歩です。

人流データは、公的統計では見えない「時間帯別・曜日別に人がどう動いているか」を補います。ただしここは注意が要ります。提供事業者によって取得元・精度・カバレッジ・料金が大きく異なり、仕様の変動も早い領域だからです。大きく分けると、携帯基地局の在圏情報を人口換算する基地局系(面で広いが粒度は粗め)、スマホのGPSやアプリの測位ログを使うGPS/SDK系(点で細かいが母集団はアプリ許諾ユーザーに依存)、店舗などに設置した機器で近接を検知するビーコン系(屋内・特定地点に強い)があり、同じ「人流」でも母集団の作り方がまったく違います。「どれも人流だから横並びで比較できる」と考えると、精度と母数の非対称性を見落とします。無料で使えるものとしては国土交通省の「全国の人流オープンデータ」がG空間情報センター経由で公開されていますが、2026年7月時点で確認できる範囲では、データは2019〜2021年で更新が止まっており最新の動きは追えませんG空間情報センター)。最新の人流が必要なら有料サービスの検討になり、そこでは各社の最新資料でスペックを確認するのが安全です。

そして自社POS・会員データ。前節の実勢商圏はここから引きます。公的統計が「商圏に誰が住んでいるか」を教えるのに対し、自社データは「実際に誰が来ているか」を教えます。この2つを突き合わせると、「商圏にはいるのに来ていない層」が見え、そこが伸びしろになります。

データ 主な取得元 何が分かるか コスト
国勢調査 e-Stat/jSTAT MAP 商圏内の人口・世帯・年齢構成(母数と客層の骨格) 無料
経済センサス e-Stat/jSTAT MAP 商圏内の同業種事業所数・従業者数(競合密度) 無料
人流データ 各提供事業者(基地局/GPS/ビーコン系) 時間帯・曜日別の人の動き(通行・滞在) 有料が中心(無料は更新停止)
自社POS・会員データ 自店 実際の来店客の居住地・客層(実勢商圏) 自社保有

ハフモデルと勢力分析の使いどころ(過信しない前提で)

商圏を引き、データを流し込んだ次に出てくるのが、「競合店がある中で、自店にどれだけ客が来るか」という問いです。ここで登場するのがハフモデルと勢力分析です。

ハフモデルは、David L. Huff が1960年代に提示した、商圏を確率で捉えるモデルです(Huff 1964 書誌(Journal of Marketing)。考え方はシンプルで、ある消費者がある店を選ぶ確率を、店の魅力度に比例させ、店までの距離(時間距離)の抵抗に反比例させて、競合店全体で按分する、という重力モデルです。代表的な説明では、魅力度を売場面積で代理することが多く、距離の効きめを表すパラメータλ(距離抵抗係数)で遠さの効きめを調整します。

このλが実務上の勘どころです。λは業種で変わります。 食品のような最寄り品は「少しでも遠いと行かない」のでλが大きく、家具・家電のような買回り品は「遠くても足を運ぶ」のでλが小さくなります(JMR 用語集)。本来λは地域・業種ごとに実データから推定するもので、経験的におおむね1.5〜2の範囲を取ることが多いとされます。日本では、λを一律に固定した簡便版(修正ハフモデル)が、大規模小売店舗法に基づく大型店の出店審査で用いられたと民間の解説では説明されています。実測に頼らず標準化した簡便法として扱われた、という位置づけです。

勢力分析は、このハフモデルの「確率で按分する」考え方を地図上で可視化し、自店と競合店の勢力圏の境界(どこから先は競合の方が選ばれるか)を引く手法です。出店余地のある空白地帯や、競合とせり合う境界線を掴むのに使えます。

ただし、ハフモデルも勢力分析も過信は禁物です。理由は3つあります。第一に、魅力度を売場面積だけで代理するのは粗い近似で、実際の魅力は品揃え・価格・利便性・ブランドで決まるため、どの要素を入れるかで答えが変わります。第二に、λの推定は本来手間がかかり、固定値を借りると自店の実態からずれます。第三に、これは静的なモデルで、オンライン購買や回遊行動、時間帯変動を織り込みません。ハフモデルは「仮説を作る道具」として使い、実勢商圏(実際の来店データ)で必ず答え合わせをする——この姿勢が実務では正解です。モデルの数字を結論として信じ込むと、現場の肌感覚と乖離した出店判断を招きます。

商圏分析を販促仮説に翻訳する(ここが本番)

ここからが、多くの解説記事が「活用しましょう」で済ませてしまう、いちばん価値の出る工程です。商圏を読んだだけでは1円も売上は動きません。 読んだ商圏を「明日の販促」に翻訳して初めて成果になります。翻訳は、3つの問いを順に立てると型になります。

問い1:誰に(WHO) ——商圏内のどのセグメントが自店の主力客か。ここで、国勢調査の年齢・世帯構成(商圏に誰が住んでいるか)と、自社POSの実客層(実際に誰が来ているか)を突き合わせます。「商圏にファミリー層が多いのに来店客は単身が中心」なら、そこに未開拓のセグメントがいます。平均で語らず、実在する主力客の像まで降りるのがコツです。

問い2:どの導線で(WHERE/どう届けるか) ——そのセグメントに届く媒体を、商圏の層ごとに変えます。ここで一次・二次・三次商圏の設計が効いてきます。

  • 一次商圏:距離が近く来店頻度も高いので、面で届ける媒体が効きます。ポスティング・地域チラシ・店頭サイネージ・MEO(近くで検索する人に見つけてもらう)で、日常的な想起を厚くする。
  • 二次商圏:時間商圏の境界あたりを刈り取る発想。Web広告の地域ターゲティングや、来店理由の強いオファーで「わざわざ来る」ハードルを下げる。
  • 三次商圏:面で撒いても効率が悪いので、目的来店の動機が強い層だけを狙う。指名検索・口コミ・紹介で「この店だから行く」人を拾う。

問い3:何を訴求するか(WHAT) ——実勢商圏の分断や競合の勢力から、訴求の軸を方角ごとに変えます。同じチラシを全商圏に一律で撒くのではなく、方角ごとに打ち手を変えるわけですが、その判断を速くするために、商圏を3つのタイプに分けて考えると型になります。

  • 機会商圏:商圏人口は多いのに、実勢商圏で見ると実客が少ない方角。原因はたいてい認知不足なので、まず知られること(認知獲得)に投資します。追うKPIは新規来店数と認知の指標
  • 防衛商圏:強い競合がいて、実客も競合に取られている方角。価格やアクセスで正面からぶつからず「自店にしかない便益」で差別化するか、投資を抑えて割り切るかの判断になります。追うKPIは競合とせり合う層の来店率
  • 低効率商圏:面で撒いても反応が薄い、遠い方角。目的来店の動機が強い層だけを指名検索・口コミ・紹介で拾い、面の配布は絞ります。追うKPIはCPA(1件獲得あたりのコスト)

この3タイプで見ると、「一次商圏には日常利用のメッセージ、二次商圏には来店動機を作るオファー」といった媒体・訴求の出し分けが、勘ではなく判断基準に乗ります。そして打ち手を決めたら、KPIは「配布したか」で止めず、反応率→新規来店→会員化→再来店→CPAまで一気通貫でつなぎます。ここまで設計して、商圏分析は初めて次のサイクルを回せる投資になります。

この3つの問いを通すと、商圏分析のアウトプットが「半径3km・人口○万人」という数字から、「一次商圏のファミリー層に、ポスティングで、平日夜の時短メニューを訴求する」という実行できる販促仮説に変わります。ここまで翻訳して、初めて商圏分析は投資に見合います。

[制約→判断→結果→再現条件:チェーン店の商圏設計支援から] あるチェーンの販促設計を支援したとき、商圏分析が「各店の半径商圏内人口を並べた一覧表」で止まっていたことがありました(固有名・数値は伏せます)。制約は、全店が同じチラシを同じエリアに一律配布していて、店ごとの商圏の違いが打ち手に反映されていなかったこと。判断は、各店の実勢商圏(実際の来店データ)を引き直し、「一次商圏に主力客が厚い店」と「一次が薄く二次に広く分布する店」を別々に扱ったこと。前者は一次商圏への面の配布を厚く、後者は二次商圏の動線上での刈り取り(Web広告と来店オファー)へ配分を組み替えました。結果として、同じ販促予算のまま配布設計だけを店ごとに変える方針になりました。再現条件は、店ごとに実勢商圏を引けること(会員住所やPOSの居住地データ)。この分解ができない店は、商圏の違いを打ち手に落とせず、全店一律という最も粗い配布に逃げてしまいます。

商圏から翻訳した販促仮説を、実際の来店動線(認知→誘引→保持)に組み立てる工程は、店舗集客の方法|認知×誘引×保持で組む来店動線フレームで1段深掘りしています。「誰に・どの導線で」まで決めた後、具体的にどの施策をどう組むかは、そちらを続けて読んでください。

よくある失敗(円で満足する/競合を入れ忘れる)

商圏分析でつまずくパターンは、だいたい決まっています。先回りで潰しておきます。

  • 半径円を引いて満足する:同心円は初期のたたき台です。川・線路・幹線道路といった心理的・物理的な分断を無視して円のまま人口を数えると、実際には来ない方角の人口まで「見込み客」に数えてしまいます。円を引いたら、必ず時間商圏か実勢商圏で歪みを補正します。
  • 競合店を商圏に入れ忘れる:自店の商圏だけを見て、同じ商圏内の競合の吸引力を勘定に入れないと、需要を過大に見積もります。商圏内人口が多くても、強い競合がいれば自店に来る確率は下がります。ハフモデルや勢力分析は、この「奪い合い」を織り込むための道具です。
  • 人流データを鵜呑みにする:前述のとおり、人流データは提供事業者で母集団も精度もまるで違います。1つのサービスの数字を絶対視せず、公的統計や自社データと突き合わせて整合を確かめます。
  • モデルの数字を結論にする:ハフモデルの確率も、推計人口も、あくまで仮説です。実勢商圏(実際の来店)で答え合わせをしないまま出店や大型販促を決めると、現場感覚とずれた判断になります。
  • 商圏を読んで終わる:最大の失敗がこれです。分析レポートを作っただけで「誰に・どの導線で・何を訴求するか」まで翻訳しなければ、商圏分析はコストにしかなりません。

そして、翻訳した販促を打った後は、効果を正しく測る段が待っています。「商圏施策をやったら客数が増えた」が、本当に施策のおかげなのか、天候や季節のせいなのかは、比較設計をしないと分けられません(統計でいう交絡)。ここを測り違えると、次の商圏施策の判断もずれていきます。効果測定の比較フレームは、姉妹記事店舗販促のKPI設計|天候・客数・施策の交絡を切る比較フレームで具体的に扱っています。

まとめ

商圏分析は、半径円を引いて人口を数える作業ではなく、商圏を設計して読み、「誰に・どの導線で・何を訴求するか」の販促仮説に翻訳する意思決定です。一次・二次・三次商圏を距離・時間・実勢の3つの見方で使い分け、国勢調査・経済センサス・jSTAT MAPといった無料の統計で土台を作り、ハフモデルや勢力分析は仮説の道具として使い実勢商圏で答え合わせをする。そして最後に、読んだ商圏を打ち手に翻訳し、効果を交絡を切って測る——ここまでがワンセットです。

商圏設計を含むエリアマーケティングの全体像はエリアマーケティングとは|店舗集客と商圏設計の実務で、翻訳した販促を来店動線に組み立てる工程は店舗集客の方法で、効果の測り方は店舗販促のKPI設計で、それぞれ深掘りしています。

FAQ

Q. 商圏は半径何kmで設定するのが正解ですか? A. 単一の正解はなく、業態で大きく変わります。コンビニや飲食のような最寄り立地は半径1km前後、食品スーパーで数km、家具・家電のような目的来店型はさらに広がります。半径円はあくまで初期のたたき台で、実際は「徒歩・車で何分か」の時間商圏や、来店データから引く実勢商圏で補正するのが正確です。円の人口を数えて終わりにしないことが肝心です。

Q. お金をかけずに商圏分析を始めるには何を使えばいいですか? A. 総務省統計局の無料GIS「jSTAT MAP」が最短です。登録なしでも地図上でエリアの統計を見られ、無料のユーザー登録をすると、指定した到達圏の年齢別人口・世帯数・経済センサスをまとめたレポートをExcelで出力できます。元データの国勢調査・経済センサスもe-Statですべて無料で取得できます。まず自店周辺の到達圏を引いてレポートを出すところから始めてください。

Q. ハフモデルは信頼できますか?そのまま出店判断に使っていいですか? A. 仮説を作る道具としては有効ですが、そのまま結論にはしないでください。ハフモデルは店の魅力度を売場面積で代理し、距離の抵抗係数λで遠さの効きめを調整する確率モデルですが、魅力度は本来もっと多くの要素で決まり、λも業種・地域で変わります。静的なモデルなのでオンライン購買や時間帯変動も織り込みません。モデルで当たりをつけ、実際の来店データ(実勢商圏)で必ず答え合わせをする使い方が実務では安全です。

Q. 一次商圏・二次商圏・三次商圏は何で分けるのですか? A. 来店頻度と距離(または到達時間)で分けます。一次商圏は来店客の主力(おおむね5〜7割)を占める最も近い層、二次商圏は週1〜月数回の中間層、三次商圏は月1回以下の遠い層です。数字は業態で動く目安なので、絶対値より「主力がどの層に厚いか」を自店の来店データで確かめることが重要です。層ごとに効く販促媒体が変わるため、この3分類は打ち手の設計に直結します。

Q. 人流データを買えば商圏分析の精度は上がりますか? A. 補える情報は増えますが、万能ではありません。人流データは提供事業者によって取得元(携帯基地局/スマホGPS/ビーコン)も母集団も精度もまったく異なり、仕様の変動も早い領域です。「どれも人流だから同じ」ではないので、1つの数字を絶対視せず、無料の公的統計や自社の来店データと突き合わせて整合を確かめてください。無料の政府系人流データもありますが、更新が止まっており最新の動きは追えない点に注意が要ります。

Q. 商圏分析をやったのに売上が動きません。何が足りないのですか? A. 分析を「販促の打ち手」に翻訳する工程が抜けている可能性が高いです。商圏を読んだら、「誰に・どの導線で・何を訴求するか」まで落とし込んで初めて成果につながります。たとえば「一次商圏のファミリー層に、ポスティングで、平日夜のメニューを訴求する」というところまで具体化します。読んで終わりのレポートはコストにしかなりません。翻訳の型は本文§5を参照してください。

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