予算がつき、議会を通り、いよいよ事業者を公募することになった。ここで担当者が最初にやるのは、たいてい他の自治体の仕様書を探すことです。
実際、探せば出てきます。シティプロモーションの公募は各地で行われていて、仕様書も評価基準も質問回答もPDFで公開されている。真似できる材料は揃っています。
問題は、どこを真似るかです。仕様書は業務内容の記述が大半を占めるので、そこを写すと形にはなります。ただ、契約が終わったあとに効いてくるのは、たいていもっと後ろのほう、最後の数条に書かれている部分です。
この記事では、実際に公開されている4市の仕様書を読み比べます。優劣をつける意図はありません。同じ「シティプロモーションの委託」でも、書き方が明確に割れている箇所があることを示すのが目的です。
結論:割れているのは業務内容ではなく「出口」
先に結論です。
- 著作権の扱いは、4市とも同じでした。 成果物の著作権は発注者に帰属し、受注者は著作者人格権を行使しない。ここは論点になりません。心配しなくていい欄です。
- 割れていたのは、契約が終わったあとの引き継ぎ先です。 「市が自分で回せるように」と書いてある市と、「次の受注者へ引き継ぐように」と書いてある市がありました。同じ引継ぎ条項でも、宛先が違います。
- そして、仕様書に自走を書いても、評価基準がそこを見ていないことがあります。 川崎市の選定評価基準では、実施体制と役割分担の配点は100点中5点でした。企画の作成力が合計70点です。
3つ目が、この記事でいちばん伝えたいことです。仕様書と評価基準がちぐはぐだと、仕様書に書いた出口は実現しません。 提案する側は、配点の重いところに人と時間を寄せるからです。
読んだもの
比較したのは、いずれも各市が公開しているPDFです(2026年9月7日取得)。
- 国立市『令和8年度国立市シティプロモーション推進事業委託 仕様書』および質問回答(18問)
- 愛西市『愛西市シティプロモーション伴走支援業務委託仕様書』
- 町田市『町田市シティプロモーションサイト運用等業務委託 仕様書』および特記仕様書
- 川崎市『令和8年度シティプロモーション推進業務委託 仕様書』および選定評価基準
- 川崎市『令和6年度シティプロモーション推進業務委託』仕様書・評価基準(経年比較のため)
事業の中身はそれぞれ違います。国立市は戦略の策定から実行まで、愛西市は3年間の伴走支援、町田市はサイトの運用、川崎市は広報全般のコンサルテーションとパブリシティです。同じ土俵ではありませんが、だからこそ「どの市も必ず書く欄」の書き方の差が見えます。
5項目で並べる
以下、順に見ていきます。
条項1|契約期間:単年度が標準、3年は例外
4市のうち3市が単年度です。愛西市だけが3年(令和11年3月19日まで)でした。
単年度が悪いわけではありません。ただ、単年度の契約で「戦略を作って、実行して、検証して、庁内に定着させる」まで求めると、実務上かなり詰まった日程になります。国立市の仕様書は、この点を目安の月で明示していました。
(1)現状把握と本市独自の魅力と特性の整理(目安:6月〜9月頃) (2)戦略および指針の構築(目安:9月〜11月頃) (3)戦略の実行及び検証(目安:11月以降)
契約が始まって半年は調査と戦略づくりに使う想定です。実行に回せるのは11月以降。単年度でここまで求めるなら、この程度の配分になるのが自然という、実務的な目安として参考になります。
一方で愛西市は、3年を年度ごとに割っていました。
・1年目:戦略設計、市民・事業者参加型広報の基盤整備、メディア露出の強化 ・2年目:事業者参加の拡大、メディア露出の更なる強化 ・3年目:市民参加の拡大、ブランドの確立、仕組みの定着、自走化、総括
「自走化」が3年目の年度目標として、事業の設計に組み込まれています。 単年度契約でこれを書くと願望になりますが、複数年で年度を切って書くと工程になります。書き方の差というより、期間の差がそのまま設計の差になっている例です。
なお、複数年で契約するときの法令上の考え方は、自治体・公共施設のデジタルサイネージ運用|更新が止まる分かれ目と、続く形をつくる調達設計で扱っています。物品の借り入れや役務提供を複数年でどう買うかは、そちらをご覧ください。
条項2|打合せ:月1回と週1回では、別の事業になる
ここが4市でいちばん大きく割れました。
- 国立市:回数の明示なし。「本市と密接に連携し、各段階において適切な合意形成を図りながら進めること」
- 愛西市:「愛西市との打合せを綿密に行い(月1回程度)、打合せ記録の議事録を作成する」
- 町田市:「必要に応じて月1回程度」。加えて「会議開催日の前日営業日の正午までには、当日の資料案を提出し、事前に報告内容等を共有する」
- 川崎市:「週1回、原則2時間の対面での打ち合わせを実施し、議題及び摘録等の必要となる書類を作成すること。なお、うち月1回は月例報告を含むものとする」
月1回と週1回では、年間の接触回数が12回と約50回になります。同じ金額でも、まったく違う事業です。
さらに興味深いのは、川崎市が令和6年度には「発注者との定例打合せ(月1回程度)」と書いていたことです。同じ市の同じ事業で、2年のあいだに打合せの頻度が4倍になっています。
[解釈] 途中で訴求や打ち手を変えられる回数を増やしにいった、と読むのが自然です。年に12回しか会わない設計だと、年度の途中で軌道修正する機会が実質的にありません。
ただし、対立する読み方も置いておきます。回数を仕様に書けば、その分の人件費が見積に乗ります。 上限額が同じなら、打合せに寄せた分だけ実行に回る予算が減ります。週1回2時間の対面を年間50回といえば、移動を含めて相当な工数です。
したがって実務の問いは「何回にするか」ではなく、「上限額のうち、どれだけを打合せに配分するか」になります。町田市が「前日正午までに資料案を提出」と書いているのは、この配分を効かせる工夫として読めます。回数を増やさずに、1回あたりの密度を上げる書き方です。
条項3|成果物:制作物を並べるか、記録を求めるか
成果物の欄は、2つの型に分かれていました。
制作物を並べる型(町田市)は、記事・写真素材・デザインデータ・業務報告書を一式で挙げています。サイト運用の委託なので、これは自然な書き方です。
プロセスの記録まで求める型(国立市)は、少し違います。
(3)組織内浸透・伴走支援の実施記録 定めた戦略を各部局が日々の業務で活用するための具体的なルールの共有や職員の意識改革やノウハウ習得のために研修等を実施する際の支援内容、および組織体制の構築結果をまとめたもの。
「組織体制の構築結果」が納品物になっています。 制作物ではなく、庁内に何が根づいたかを文書で残させる形です。
愛西市も近い書き方で、KPI報告書を上半期・通年で、実績報告書を各年度で、最終年度は3年間の総括報告書を求めています。
[解釈] 制作物だけを並べると、事業者はその納品をもって契約を終えます。これは事業者が不誠実だからではなく、契約とはそういうものだからです。庁内に残ってほしいものがあるなら、それを成果物の欄に書くしかありません。
素材そのものを後から使い回せる形で受け取る設計は、販促素材のワンソース・マルチユース設計で扱っています。撮影データを面ごとの仕様差を踏まえて納品してもらうかどうかで、翌年度の作業量が変わります。
条項4|出口:宛先が2つある
ここがこの記事の中心です。4市とも引き継ぎについて書いていますが、引き継ぐ相手が違いました。
型A|市が自分で回せるように
国立市の書き方が、いちばん踏み込んでいます。
本業務において構築する管理ツールや情報発信の基盤は、原則として汎用性の高いプラットフォームを採用し、特定の事業者に依存することなく本市が継続的に運用・管理できる構成とすること。 委託期間終了後、本市が自律的に運用を行うために必要なID・パスワードの移管、運用ノウハウの提供、および必要な引き継ぎを誠実に履行すること。
「特定の事業者に依存することなく」と明記されています。 受注者が自社の独自ツールで囲い込むことを、仕様の段階で塞ぐ書き方です。
町田市は、引き継ぎに1条をまるごと割いていました。
3 甲の引継ぎ未了と認めた場合は、委託期間終了後であっても乙の負担と責任で業務の引継ぎを行うものとする。 6 乙は、サイトを移管できるよう、サイトデータ一式(ウェブサイトを構成するデータおよびデータベースのデータすべて)を、甲又は甲の指定する者の必要なタイミングで速やかに提出すること。
契約期間が終わっても引き継ぎ義務が残る、という書き方です。「年度末に慌てて引き継ぎを頼んだら、契約が切れていて対応してもらえない」という事故を、条項で防いでいます。
愛西市は、先に触れたとおり3年目の年度目標そのものに「自走化」を置き、さらに「伴走支援終了後においても、市が自立して取組を継続できる体制の構築を提案すること」と提案要件にしています。
型B|次の受注者へ
川崎市は、引き継ぎ先が違います。
契約満了日が近づいた際には、本サイトが継続的に運用可能となるように、成果物の迅速な提供のほか、サイト運用に必要な情報や、受注者が主体となって行った契約等について、次期受注者への引継ぎを適切に行うこと。
宛先が「次期受注者」です。 これは、委託を続ける前提の設計です。
型Bが劣っているわけではありません。川崎市の事業は週1回2時間の対面を含む広報全般のコンサルテーションで、規模も内容も庁内で巻き取れる性質のものではないでしょう。継続的に委託する前提なら、次の受注者にきちんと渡ることのほうが重要です。
大事なのは、どちらを選んだのかを自覚して書いているかどうかです。型Bのつもりがないのに型Bの書き方をすると、毎年ゼロから説明し直す事業になります。逆に、庁内で回す体制がないのに型Aだけを書くと、引き継ぎ資料が誰にも読まれずに終わります。
アカウントは誰のものか
出口の話で、もうひとつ具体的な論点があります。SNSやプレスリリース配信のアカウントです。
川崎市は、プレスリリース配信サービスについて「現在発注者が使用しているアカウントを使用」と明記していました。サービスの契約は受注者が行うが、アカウントは市のものという整理です。
国立市の質問回答は、さらに踏み込んでいました。事業者からの「貴市が保有する広報媒体(HP、SNS、広報誌等)の活用範囲・運用権限はどこまで委託可能でしょうか」という質問への回答です。
市公式アカウントを本業務の情報発信プラットフォームとして活用することは可能です。その際は、ID・パスワードの管理や最終的な投稿操作は市で行うことを想定しています。
投稿の最終操作は市が行う。 これは、全国の実態とも一致します。全国1,741自治体を対象にした調査(有効回答478)では、公式SNSアカウントの運用を外部委託している自治体は1.0%、5団体だけでした。59.4%は決まった部署がすべての投稿を担当しています。詳しくはシティプロモーションとは|計画に書いてあるのに動かない理由と、少人数で続ける体制の設計で扱いました。
日々の発信は庁内に残る、という前提で委託を設計するほうが実態に合います。
条項5|再委託:4市とも「全部は不可」で揃っている
再委託の扱いは、表現に幅はあるものの方向は同じでした。
- 愛西市「受託した業務を一括して第三者に委託し、又は請け負わせることはできない。ただし、業務を効率的に行う上で必要と思われる業務について愛西市と協議の上、業務の一部を委託することができる」
- 町田市「再委託は原則認めないが、業務遂行上やむを得ず再委託する場合は……町田市の事前許可を得るとともに、システム要件及びセキュリティ要件の履行状況について定期的に町田市へ報告すること」
- 川崎市「業務の一部を再委託する場合には、発注者からの承諾を得ること」
- 国立市(質問回答)「原則、委託業務の全部を委託することはできません。ご提案時、どの部分をどちらに再委託をするかを明示してください」
一括の丸投げは不可、一部は事前の承諾を得たうえで可。この形で揃っています。
[解釈] 実務で効くのは、国立市の「提案時に、どの部分を誰に再委託するか明示」という書き方です。契約後に承諾を求める形だと、体制が確定するのは契約後になります。提案の段階で出させれば、評価のときに実際の実施体制が見えます。
内製と外注の線引きをどう決めるかは、SNS運用は内製か外注か|工程分解と承認フローで決める体制設計で工程分解の型を扱っています。委託の範囲を決める前に、工程を分けて見ておくと仕様が書きやすくなります。
ここが盲点:仕様書に書いても、評価基準が見ていないことがある
ここまで、出口条項が大事だという話をしてきました。ただ、仕様書に書けば実現するかというと、そうとは限りません。
川崎市は選定評価基準も公開しています。令和8年度の配点は100点満点で、次のようになっていました。
企画の作成力が合計70点、実施体制及び役割分担は5点です。 令和6年度の評価基準を見ても、実施体制及び役割分担は同じく5点でした。2か年で変わっていません。
これを批判として読まないでください。広報の委託で企画力が中心になるのは、事業の性質としてまったく妥当です。 週1回2時間の打合せまで書き込んでいるのですから、体制が軽視されているわけでもありません。
指摘したいのはもっと単純なことです。提案する側は、配点の重いところに人と時間を寄せます。 体制と役割分担が5点なら、提案書のそのページは1枚で終わります。仕様書に「自走化」「引き継ぎ」と書いてあっても、評価でそこを見ないなら、提案の厚みはそこに来ません。
したがって、仕様書に出口を書いたなら、評価基準の配点もそこに合わせる必要があります。少なくとも、次のような確認はしておいて損がありません。
- 仕様書に書いた「引き継ぎ」「自走化」に対応する評価項目があるか
- あるとして、それは何点か
- 「実施体制」の評価指標が、体制図の有無ではなく契約後に庁内に何が残るかを見る書き方になっているか
仕様書を書く前に決めておく3つ
ここまでの5条項を、発注側の作業に落とすとこうなります。
1|出口の宛先を先に決める。 庁内で回すのか、委託を続けるのか。決めてから条項を書きます。両方を混ぜて書くと、どちらも実現しません。
2|上限額のうち、打合せに何割を配分するかを決める。 週1回にするか月1回にするかは、予算配分の判断です。回数だけ増やすと、実行に回る分が減ります。町田市のように「前日正午までに資料案」と書いて密度を上げるやり方もあります。
3|庁内に残ってほしいものを、成果物の欄に書く。 体制の構築結果、研修の記録、運用の手順。制作物の一覧だけでは、これらは残りません。
そのうえで、KPIをどう書くかという論点があります。ここは財源によって作法が変わるので、指標から決めると後で作り直しになります。地方創生関係の交付金と観光庁のDMO向けの枠組みでは、満足度の扱いが逆になる。詳しくは地域マーケのKPI設計詳解|「測りにくいが意味のある指標」を制度に通す手順をご覧ください。
なお、国立市の質問回答には、こんなやりとりがありました。
質問:指標(KGI/KPI)の設定に関しての質問です。……現在、貴市で運用されているKGI/KPIがございましたら、ご教示ください。 回答:現在運用しているKGI/KPIはございません。本事業内で明確化する想定です。
ターゲット層についても、予算配分についても、実証施策の規模についても、回答は同じく「本事業内で明確化する想定です」「配分に関する想定は設けてません」でした。
[解釈] これを「決めずに出している」と読むこともできますが、意図的に決め切らず、提案の幅を取りに行っているとも読めます。国立市の仕様書は「本仕様書に定める内容は最小限の要求事項である」と明記しており、後者の設計として一貫しています。
ただ、実務上のリスクは残ります。KPIもターゲットも受託者の提案で決まるなら、庁内の合意はその後から取ることになります。 議会や庁内会議で「なぜこのターゲットなのか」と問われたとき、答えの根拠が受託者の提案書になる。これを引き受けられるかどうかは、事前に判断しておいたほうがよい論点です。
受託側から見て、何ができないか
当社は受託する側です。立場上、有利になる書き方はしません。そのうえで、実務として率直に書きます。
引き継ぎ条項が無い契約は、こちらとしても座りが悪いものです。 3年関わったあとに何も渡さず終わるのは、事業者としても後味がよくありません。ただ、契約に書かれていない作業を年度末に追加でやるのは、体制として難しい場合があります。書いてあれば、最初からその工数を見積に入れます。
打合せ回数が明示されていないと、見積が出しにくくなります。 国立市のように「密接に連携し」とだけ書かれていると、事業者側で回数を仮置きして見積を作ることになります。結果として、提案ごとに前提が違う見積が並び、比較しづらくなります。回数まで書いてあるほうが、発注側にとっても比較しやすいはずです。
成果物に「体制の構築結果」が入っていると、進め方が変わります。 制作物だけが成果物なら、制作に集中するのが誠実な対応です。庁内に手順を残すことが成果物なら、そのための時間を最初から確保します。事業者は仕様書に書いてあることをやります。 書いていないことを期待するのは、設計として無理があります。
当社が実際に自治体案件でどう向き合ってきたかは、シティプロモーションとはの後半で栃木市役所広報課様の案件などを含めて書きました。測れないものを測れるふりをせず、責任範囲を先に合意する。仕様書の話も、根は同じです。
まとめ
シティプロモーションの業務委託で、後から効いてくるのは業務内容の記述ではありません。
- 契約期間:4市中3市が単年度。単年度で戦略から定着まで求めるなら、実行に回せるのは年度後半になる
- 打合せ:月1回と週1回では別の事業。川崎市は2年で頻度を4倍にした。回数は予算配分の判断
- 成果物:制作物だけを並べると、制作物だけが残る。庁内に残したいものは成果物の欄に書く
- 出口:引き継ぎ先が「市」と「次期受注者」の2種類。どちらを選んだか自覚して書く。アカウントの管理と最終操作は市に残すのが実態に合う
- 再委託:4市とも一括は不可で揃う。提案時に誰へ再委託するか明示させると、評価のときに体制が見える
そして最後に、仕様書に出口を書いたら、評価基準の配点もそこに合わせてください。 書いただけでは、提案は集まりません。
関連記事
- シティプロモーションとは|計画に書いてあるのに動かない理由と、少人数で続ける体制の設計:委託の前に決める体制・予算・委託の3点
- 自治体・公共施設のデジタルサイネージ運用|更新が止まる分かれ目と、続く形をつくる調達設計:複数年契約の法令上の考え方
- SNS運用は内製か外注か|工程分解と承認フローで決める体制設計:委託の範囲を決める前の工程分解
- 地域マーケのKPI設計詳解|「測りにくいが意味のある指標」を制度に通す手順:財源ごとに違う指標の作法
- 販促素材のワンソース・マルチユース設計:素材を面をまたいで使える形で受け取る
よくある質問(FAQ)
Q1: 他の自治体の仕様書を、そのまま使ってよいですか? 業務内容の記述は事業の中身によって変わるので、そのままは使えません。一方で、著作権の帰属・再委託・引き継ぎといった条項は、どの自治体でも似た書き方に落ち着いています。参考にする価値が高いのは後者です。ただし引き継ぎ条項だけは、宛先が「市」なのか「次期受注者」なのかで意味が変わるので、自分の事業がどちらかを決めてから写してください。
Q2: 成果物の著作権は、必ず市に帰属させるべきですか? 今回読んだ4市はすべて発注者帰属で、かつ受注者が著作者人格権を行使しないことも明記していました。実務上の標準と考えてよさそうです。あわせて「第三者の権利を侵害していないことの保証」も4市とも書いています。
Q3: 打合せは月1回と週1回、どちらがよいですか? 事業の性質と予算次第です。年度の途中で訴求や打ち手を変える必要がある事業なら、回数が要ります。逆に制作物の納品が中心なら、月1回でも回ります。回数を増やせばその分の工数が見積に乗るので、上限額のなかでの配分として考えてください。回数を増やさずに密度を上げるなら、町田市のように「前日正午までに資料案を提出」といった書き方が参考になります。
Q4: SNSの運用も委託できますか? 制度上は可能ですが、実態としては少数です。全国478自治体の調査では、公式SNSの運用を外部委託しているのは1.0%(5団体)にとどまり、59.4%は決まった部署がすべての投稿を担当しています。国立市の質問回答も「ID・パスワードの管理や最終的な投稿操作は市で行うことを想定」としていました。委託を検討するなら、日々の投稿そのものより、投稿の型づくり・素材の制作・立ち上げ期の伴走といった切り出しやすい部分から考えるほうが現実的です。
Q5: 複数年契約にしたほうがよいですか? 自走化まで求めるなら、単年度では工程が詰まります。今回の4市では愛西市だけが3年で、年度ごとに「基盤整備→拡大→定着・自走化」と割っていました。ただし複数年契約は制度上の制約があるため、契約の形についてはサイネージ運用の記事で扱った地方自治法上の考え方をご確認ください。
Q6: 仕様書に何も決めずに「提案してください」と書くのは、まずいですか? 一概には言えません。国立市は「本仕様書に定める内容は最小限の要求事項である」と明記し、ターゲットもKPIも事業のなかで決める設計にしていました。提案の幅を取りに行く方法として一貫しています。ただしその場合、KPIやターゲットの根拠が受託者の提案書になります。議会や庁内で問われたときに、それで説明できるかを事前に確認しておいてください。
シティプロモーションの仕様書づくり、委託範囲の設計、庁内に残す機能の切り分けについてのご相談は、お問い合わせページからお気軽にどうぞ。受託する側から見て「この書き方だと何ができないか」も含めてお話しします。
参考文献
すべて各市が公開しているPDFです(取得日:2026-09-07)。
- 国立市「令和8年度国立市シティプロモーション推進事業委託に関する公募型プロポーザルを実施」(仕様書・実施要領・審査基準表・質問及び回答)
- 愛西市「愛西市シティプロモーション伴走支援業務委託公募型プロポーザルの実施について」(仕様書・公告・実施要領)
- 町田市「【結果公表】「町田市シティプロモーションサイト運用等業務委託」公募型プロポーザルについて」(仕様書・特記仕様書・質疑回答書)
- 川崎市「【事業者決定】令和8年度シティプロモーション推進業務委託公募型プロポーザル」(仕様書・選定評価基準)
- 川崎市「令和6年度シティプロモーション推進業務委託 公募型プロポーザル参加事業者の募集について」(仕様書・選定評価基準/経年比較用)
- シティプロモーション自治体等連絡協議会「令和5年度版 全国シティプロモーション実態調査 結果報告書」(2024年3月/対象1,741自治体・有効回答478自治体)