SNS運用を社内でやるか、外部に任せるか。この問いに会社単位の正解はありません。決めるべきなのは「自社は内製の会社か、外注の会社か」ではなく、運用を構成する工程のうち、どれを自社に残し、どれを外に出すかです。
SNS運用は、戦略設計から炎上時の初動まで、性質のまったく違う作業が束になったものです。制作は外に出せても、自社の商品文脈を踏まえた承認は外に出せません。逆に、分析レポートを毎月自前で組み立てる意味は薄いのに、そこだけ内製にこだわって更新が止まる会社もあります。二択で考えた瞬間に、判断は粗くなります。
この記事では、まずSNS運用を8つの工程に分解します。そのうえで、更新頻度・運用体力・承認スピード・炎上リスク許容度の4軸で「自社はどの工程を外に出すべきか」を決める型を示します。投稿の種類ごとの承認ルール表と、外注から内製化へ移す順番も示します。SNS運用の全体設計は親記事の企業SNS運用の正解|目的別の設計フレームで扱っています。本記事はその中の「誰がやるか」だけを深掘りするものです。
なお、この記事はSNS運用代行も手がける当社(デジタルプロモーション)が書いています。だからこそ、外注する必要がないケースも隠さず示します。読み手が自社の状況で判断できることを優先します。
「内製か外注か」を会社単位で決めると失敗する理由
内製と外注の比較は、たいてい「社内に人がいるか」「予算があるか」という2つの問いに縮められます。人がいなければ外注、予算がなければ内製。この整理は分かりやすい代わりに、実務ではほとんど機能しません。
理由は3つあります。
第一に、必要なスキルが工程ごとに違います。 商品の魅力を言葉にする力と、リールを編集する力と、コメント欄の温度を読んで返す力は、別の能力です。「SNSが得意な若手」に全部を任せる体制は、そのうち必ずどこかで詰まります。
第二に、外注できない工程が確実に存在します。 自社の商品・キャンペーン・季節要因の文脈を踏まえた最終承認や、炎上したときに誰の名前で謝るかという判断は、社外の事業者には持てません。ここを外に出そうとすると、承認が形骸化するか、逆に承認待ちで何も出せなくなります。
第三に、全部内製にした会社は、たいてい更新が止まります。 兼務担当者が本業に押されて投稿が途切れる。当社がご支援したみなとみらいBMW様(ウエインズインポートカーズ株式会社)も、公式のFacebookとInstagramを担当者が通常業務と並行して運用していたため、ブランドを意識した内容を定期的に出し続けることが難しい状態からのスタートでした。これはSNSに限らず、更新を伴う運用全般で起きる現象です。デジタルサイネージでも同じ構造の失敗が起きることを、デジタルサイネージ運用は内製か外注かで扱いました。媒体が変わっても、更新が止まる理屈は変わりません。
つまり「内製か外注か」は、会社の属性で決まるのではなく、工程ごとの適性で決まる問題です。
【型】SNS運用を8工程に分解する
SNS運用を実務の単位まで割ると、次の8工程になります。工程ごとに、内製が向くか外に出せるかは変わります。
■ 内製に残す ■ ハイブリッド ■ 外に出しやすい ■ 工程を分割する
内製に残すべき工程、外に出しても壊れない工程
この表の要点は、①と⑧が内製の核だということです。
①戦略・目的設計は、「SNSで何を達成したいのか」という経営の意図そのものです。ここを外部に丸投げすると、体裁の整った運用計画は出てきますが、事業の優先順位とずれます。外部の力を借りるとしても、意思決定は社内に置くべき工程です。目的の立て方は企業SNS運用の正解で、KPIへの落とし方はSNS運用のKPI設定で扱っています。
一方、④編集・⑤投稿は、手順とスキルの世界です。品質基準さえ握っておけば、外に出しても事業の芯は壊れません。むしろ、ここを兼務担当者の残業で回している状態こそ、運用が止まる最大の原因です。
②企画・③撮影・⑥コメント対応は、その中間にあります。商品知識が要るので完全には出せませんが、型が決まれば外部の比率を上げられます。たとえば企画は「社内が月次のテーマを決め、外部が具体の構成に落とす」、撮影は「日常のカットは店舗スタッフ、キャンペーン素材は外部」という分け方が現実的です。
残るのが⑦分析・レポートです。これも外に出しやすい工程ですが、④⑤とは理由がまったく違うので、節を分けて説明します。
⑦分析を外に出す理由は、工数ではない
④編集や⑤投稿を外に出す理由は単純です。時間がかかるからです。⑦分析だけは、そこが違います。社内に閉じたままでは、そもそも示唆が出ないという理由で外に出します。
第一に、数字は比べる相手がいないと読めません。 保存率が3%、リーチが前月比110%。この数字を見て「良い」とも「悪い」とも言えるのは、比べる相手を持っている人だけです。社内だけで分析すると、比較対象は自社の過去しかありません。先月より上がった、去年より落ちた。そこまでは分かりますが、「同じ業種で、同じくらいの規模のアカウントなら、普通はどのくらいなのか」が分からないので、上がった数字を喜んでいいのか、上がってもまだ水準以下なのかを判定できません。判定できなければ、次の打ち手も決まりません。複数の業種・複数のアカウントを横に見ている相手に頼む価値は、集計作業の代行ではなく、この物差しを借りられることにあります。
第二に、仕組みのほうが変わり続けます。 Instagramは公式に、単一のアルゴリズムがあるわけではなく、フィード・ストーリーズ・発見タブ・リールなど面ごとに別の仕組みが動いていると説明しています。あわせて、シグナルと予測は時期によって追加も削除もしているとも書いています(出典:Instagram Ranking Explained)。同じ運用を続けていても、時期が変われば効く指標が変わるということです。数字が動いたときに、施策が当たった(外した)のか、仕様の変化を受けたのかを切り分けられないと、打ち手は当てずっぽうになります。この変化を追い続ける作業は、月に数本を投稿する会社が兼務で担える種類のものではありません。
つまり⑦を外に出すかどうかの判断基準は、「社内に分析できる人がいるか」ではありません。自社の外側に、比較対象と最新の傾向を持っているかどうかです。人手があっても、社内だけで完結した分析は「今月の数字のご報告」で終わります。
この基準は、そのまま外注先を選ぶ物差しにもなります。月次レポートに、①同業種・近い規模との比較、②直近の仕様変化がこの数字にどう効いたかの解釈、この2つが入っていなければ、それは集計の代行であって分析ではありません。契約前にレポートの見本を見せてもらうと、すぐ分かります。
よくある失敗は「投稿だけ外注」
もっとも多い失敗の型が、④⑤だけを外に出して①を空白のまま走らせるパターンです。
投稿は毎日きれいに出ます。数字も並びます。それでも「で、これは何のためにやっているのか」に誰も答えられない。この状態になると、担当役員から予算を問われた瞬間に運用が止まります。外注する順番としては、①を社内で決めてから④⑤⑦を出す。逆にしてはいけません。
判断の4軸
工程分解を踏まえたうえで、自社がどの程度まで外に出すべきかを4つの軸で自己診断します。各軸で自社がどこに当てはまるかを見て、票がどこに集まるかで方向を決めます。
各行で自社に当てはまるセルを1つ選び、色が集まった列が自社に向いている体制です。■ 内製寄り ■ ハイブリッド ■ 外注寄り
読み方はそのままです。専任がいて、更新頻度が低く、承認が速く回るなら内製で十分です。外注する必要はありません。逆に、複数媒体を高頻度で回したいのに担当が兼務で、承認が4段あるなら、④⑤⑦を外に出さないと必ず破綻します。
注意したいのは、承認スピードの軸です。ここは外注すれば速くなる軸ではありません。承認段数が多い会社は、外注してもそのまま遅いからです。この軸だけは、外注ではなく承認設計そのものを変えないと動きません。次の章で扱います。
出回っている「内製化できる会社の条件」をどう読むか
SNS運用の内製化を扱う記事には、「年商がいくら以上」「人件費をいくら負担できるか」といった閾値つきのチェックリストがよく出てきます。数字が入っていると判断しやすく見えますが、扱いには注意が要ります。
こうした閾値の多くは、どの業種・何媒体・月何本という前提が書かれていません。 月4本を1媒体で回す会社と、月30本を3媒体で回す会社では、必要な人員も人件費もまるで違います。前提が示されていない数字は、自社に当てはめる根拠を持ちません。
読むときは、その数字の分母を探してください。何本・何媒体・どの業種を想定した数字なのか。それが書かれていないチェックリストは、参考程度に留めるのが安全です。同じ理由で、この記事でも会社規模の閾値は示しません。示すべきは数字ではなく、自社の工程と承認段数だと考えているからです。
承認フローが体制を決める
体制の議論は、たいてい「誰がやるか」で終わります。しかし実務で運用の速度を決めているのは、担当者の人数ではなく承認の段数です。
承認の段数と投稿速度のトレードオフ
投稿1本が世に出るまでに何人の目を通すかで、リードタイムは大きく変わります。
問題は、多くの会社がすべての投稿を最も厳しい段数で回していることです。価格訴求の投稿に法務チェックが要るのは当然ですが、店舗の日常風景まで同じフローに乗せると、投稿は確実に止まります。
現実的な設計は、投稿を種類で分け、種類ごとに段数を変えることです。日常投稿は1段、商品紹介は2段、価格や効能に触れるものだけ3段以上。この振り分けを先に決めておくと、「念のため全部通す」という運用から抜けられます。逆にこれを決めずに外注すると、外部の制作物が承認待ちの列に並び続け、外注費だけが出ていきます。
ただし、段数が多いこと自体が悪いわけではありません。ブランド基準や表示ルールが明文化されている企業では、その厳しさに意味があります。当社がInstagram運用をご支援している株式会社JR東日本びゅうツーリズム&セールス様も、JR東日本グループとして情報発信のコンプライアンスとブランド基準が厳格に定められている会社です。こうした会社が外注先に求めるべきなのは、速さではなくその基準を理解していることになります。同社が当社を選ばれた理由の一つも、自治体の案件を通じて公的な基準に沿った発信の経験があった点でした。承認が重い会社ほど、外注先の選定基準は制作力より基準の理解度に寄ります。
投稿の種類ごとの承認ルール表
「日常投稿は1段、価格や効能に触れるものは3段以上」という振り分けを、実際に運用できる表に落とします。列を5つ決めておくと、新しい投稿の種類が出てきても迷いません。ここでいう承認段数は、起案者を除き、順番に承認を受ける段階の数を指します。この表は承認設計のたたき台であり、段数や日数は自社の基準やリスクの大きさに応じて調整する目安です。
この表は、自社の投稿カレンダーの横に置いて、投稿を出す前に「どの行に当たるか」を決めるために使います。行の中身は事業内容に合わせて書き換えて構いません。列(承認段数・承認者・見る観点・目安リードタイム)は目安として使い、複数の行に当てはまる投稿は段数の多いほうに合わせてください。承認者が不在のときの代理と、承認の期限もあらかじめ決めておくと安心です。新しい種類の投稿が出てきたときは、既存の分類に当てはめるか、行を1本追加するかで対応できます。
承認を速くする3つの決めごと
ルール表を作っても、運用の中で承認が詰まることはあります。承認の停滞を減らすため、まず確認したい3点を挙げます。
- 承認依頼に何を添えるか:画像・本文・掲載日・上表のどの行に当たるか。この4点をセットで出す約束にしておくと、承認者は「これは何行目か」から確認を始めずに済みます。
- 差し戻しの理由を記録する:差し戻すたびに理由を一言残します。同じ理由の差し戻しが続くときは、基準が明確かどうか、その基準が現場に共有されているか、承認者どうしの判断が一致しているかを確かめてください。
- 承認所要時間を測る:ここでは指標を2つに分けます。投稿リードタイムは起案から公開までの日数、承認所要時間は承認依頼を出してから最終承認が返るまでの時間です。まずは承認依頼を出した時刻と承認が返ってきた時刻を投稿管理シートに1列足して記録するところから始められます。月次で並べると、詰まっているのが制作側か承認側かが見えます。KPIの考え方はSNS運用のKPI設定で扱っています。
この3つを最初から仕組みに組み込んでおけば、承認の遅さを担当者個人の感覚の問題にせず、ルール表を直す材料として使えます。
炎上対応は「外注できない」ではなく、工程で切る
炎上対応をまるごと社内に抱える必要はありません。ここも工程で分けられます。
- 監視・検知:外に出せます。24時間の目視監視を社内で持つのは現実的ではありません。
- 一次報告:外に出せます。「何が起きているか」を定型で上げてもらう工程です。
- 対応文案の作成:外に出せます。ただし、たたき台としての位置づけに留めます。
- 対応方針の決定:社内に置きます。 謝るのか、訂正するのか、静観するのか。事業への影響を判断できるのは当事者だけです。
- 謝罪の主体:社内です。 会社の名前で出す文章の責任は、外部に移せません。
つまり「炎上対応は外注できない」という言い方は雑で、正しくは検知と一次対応は外注でき、意思決定と発信主体は外注できないということです。この線引きを契約時に明文化しておくと、実際に起きたときに揉めません。
権限とアカウント管理
見落とされやすいのが、アカウントの権限管理です。外注を始めるときには必ず次を決めておきます。
- 管理者権限は自社が保持し、外部にはコンテンツ投稿権限のみを付与する
- ログイン情報を個人アカウント経由で共有しない(担当者の退職・異動で失われます)
- 契約終了時に、どの権限をいつ剥奪するかを事前に決めておく
「アカウントを外注先が握っていて、契約を切りたくても切れない」という相談は珍しくありません。運用を任せることと、資産を預けることは別の話です。
外注から内製化へ移す順番
ここまでは外に出す前提で工程を分けてきましたが、一度外注した運用を、どこかの工程だけ社内に戻したいという相談もあります。8工程の表を使うと、次の順番が移行案の一例です。
最初に戻すのは⑦分析の「判断」の部分です。ここで戻すのは分析作業そのものではありません。比較対象や仕様変化の解釈といった比較データの提供は外部に任せたままで構わず、その報告を受けて「この数字は良いのか悪いのか、次に何をするか」を決める判断だけを社内で行うようにします。次に②企画の一部です。月次のテーマ決めを社内に戻し、具体の構成づくりだけ外部に任せる形にします。最後に④編集の一部、型が固まった定型の投稿だけを内製に移します。①戦略・目的設計と⑧炎上時の意思決定は、そもそも最初から社内に置くべき工程なので、内製化の対象には数えません。
この順番を一例とするのは、失敗しても投稿がすぐには止まらない工程から戻せるからです。判断を読み違えても、投稿そのものは変わらず動き続けます。別の順番として、⑥コメント対応から戻すという選び方もあります。ここは商品知識がそのまま活きる工程なので、内製化の手応えを早く得やすいという利点があります。担当者の技能や余力によっては、③撮影や⑤投稿から先に内製化する選択肢もあります。どちらを先に戻すかは、自社が何を先に確かめたいかで選んでください。
逆にしてはいけない順番もあります。③撮影や⑤投稿の作業だけを先に戻し、①の目的設計を外部に置いたままにすると、「内製化した」のに何のためにやっているかが曖昧なままの状態が続きます。工程を戻す前に、まず何を戻すのかを1つずつ具体名で決めることが先です。
移す前に決めておくことは3つです。承認ルール表(前章の型をそのまま使えます)、投稿の基準(出してよいもの・出してはいけないもの)、そしてアカウントの権限です。とくにアカウントの権限は、外注先が握ったままだと戻す作業自体が止まります。国立市は、事業者からの「貴市が保有する広報媒体(HP、SNS、広報誌等)の活用範囲・運用権限はどこまで委託可能でしょうか」という質問への回答で、「最終的な投稿操作は市で行うことを想定しています」と答えています(令和8年度の特定業務についての質問回答。参考:シティプロモーションの業務委託|4市の仕様書を読み比べて分かった、後で困らない5つの条項)。管理者権限を自社が持つことと、日々の投稿操作を内製することは別の判断です。2024年の調査では、回答した478自治体のうち、公式SNSの運用体制として「外部委託」を選んだのは5団体(1.0%)でした(出典:全国シティプロモーション実態調査)。自治体に限った話ではありませんが、内製化を見据えるなら最初から権限を自社に残しておくという考え方は、企業にとっても参考になります。
内製化がうまく進んでいるかどうかも、フォロワー数では測れません。工程を移した前後で、投稿リードタイムと投稿の計画達成率(期間内に公開できた計画対象の投稿数÷計画投稿数×100)がどう動いたかを比べてください。ただし、この2つの数値だけでは、残業や品質の低下で穴埋めしているケースを見逃します。工数・修正件数・投稿の品質もあわせて確認してください。数値が保たれたまま工程だけが移っていれば、うまく移れていると判断できます。逆に、工程を戻した途端にリードタイムが伸びたときは、原因を調べてください。社内に判断の基準が根付いていないこともあれば、人員や習熟度、投稿内容の変化が影響していることもあります。
多店舗・チェーンの場合の当てはめ
店舗を複数持つ企業では、本部アカウントと店舗アカウントが並存します。このとき8工程は、外部との間だけでなく本部と店舗の間でも分担することになります。
現実的な分け方は、①戦略・目的設計と⑧炎上時の意思決定を本部に集約し、③撮影と⑥コメント対応を店舗に持たせ、④編集・⑤投稿・⑦分析を外部に出す形です。店舗に丸ごと任せると品質と発信内容がばらつき、本部が全部作ると現場の空気が消えます。
店舗に投稿させるなら、ガイドラインは最小限で構いません。出してよいもの・出してはいけないもの・迷ったら誰に聞くかの3点が書いてあれば、まずは回ります。分厚いマニュアルを作ると、誰も読まないまま投稿が止まります。エリア単位の集客設計そのものは店舗集客の方法|認知×誘引×保持で組む来店動線フレームで扱っています。
体制を「制約→判断→結果→再現条件」で決める
体制設計は、正解を探すより、自社の制約から逆算するほうが早く決まります。実務では次の順で言語化します。
制約を先に書き出す。 使える人員は何人か、承認は何段か、月にいくらまで出せるか。ここを曖昧にしたまま理想の体制を描くと、動き出してから崩れます。
判断を1つに絞る。 「まず④⑤⑦を外に出し、①②は社内で握る」のように、外に出す工程を具体名で決めます。「一部外注」という言い方のまま走らせないことが肝心です。
結果を先行指標で読む。 体制変更の効果は、フォロワー数では測れません。投稿の計画達成率(計画に対して実際に出せた本数)と投稿リードタイム(起案から公開までの日数)の2つが、体制が機能しているかを最も早く教えてくれます。数値の設計はSNS運用のKPI設定を参照してください。
再現条件を言語化する。 うまくいったなら、何が効いたのかを書き残します。「承認を種類別に分けたこと」なのか「編集を外に出したこと」なのか。ここを言語化しないと、担当者が変わった瞬間に元へ戻ります。
この型に、当社がご支援している2社を当てはめます。外に出した工程の数はまったく違いますが、どちらも成立しています。
事例1:戦略を社内に残し、実行を外に出す(株式会社andONE様)
移住・地域就業のWEBマガジン「KOKOSUMU」のInstagram運用です(事例記事)。
- 制約:SNS運用そのものが初めての挑戦。移住や地域で働くことを検討している層という、届けたい相手が限られる領域。予算にも上限がありました。
- 判断:「発信して終わりにせず、移住や地域で働くことを考えている人のプラットフォームに育てる」という構想は社内に置いたまま、そこへ至る戦略の設計は当社が伴走し、課題抽出から企画・制作・インサイトの効果検証・広告運用までを担う形をとりました。①のうち目的とゴール像は社内、そこから先は外部と組む、という切り分けです。
- 結果:フォロワーは1.1万人を超え、地域おこし協力隊の募集投稿からDMでの問い合わせ、採用までがInstagram内で完結する事例が生まれています。さらに自治体の公募型プロポーザルで、競合との差別化材料としてアカウント自体が機能するようになりました。運用が営業資産に変わった形です。
- 再現条件:地域のフォトグラファーとのコラボなど、現地の関係者を巻き込む制作体制。そして2日に1回という更新ペースを支える企画の供給。この2つが崩れると同じ結果は出ません。
事例2:ほぼ全工程を外に出し、基準の判断を社内に残す(株式会社JR東日本びゅうツーリズム&セールス様)
「JR東日本びゅうダイナミックレールパック」を若年層に広めるためのInstagram運用です(事例記事)。
- 制約:Instagram運用が初めてでノウハウがない。加えて、JR東日本グループとして情報発信のコンプライアンスとブランド基準が厳格に定められている。承認が軽い会社ではありません。
- 判断:立ち上げから企画、投稿、運用改善、インフルエンサーとの調整までを一気通貫で外部に出しました。社内に残したのは「20代〜30代の若年層に商品の認知を広げる」という目的と、発信内容が自社の基準に沿っているかの判断です。
- 結果:開始から2か月でフォロワー1万人を突破し、短期間で1.5万人以上に到達しています。キャンペーン終了後もフォロワーが大きく減らず、広告経由とオーガニック経由の閲覧がほぼ半々で推移しています。
- 再現条件:毎月の定例会が数値報告で終わらず、新しい切り口の企画と改善策が出てくること。もう一つは、周遊コースを列車やバスの時刻まで作り込むといった、保存されるコンテンツの設計です。保存率が上がったことでInstagram内での評価が高まり、自然流入が増える流れができたと評価をいただいています。
2社の判断は対照的です。 andONE様は目的とゴール像を社内に置いたうえで戦略設計から先を外部と組み、JR東日本びゅうツーリズム&セールス様は実行をほぼ全て出したうえで、目的と基準の判断を社内に残しました。外に出した工程の数は違いますが、「何のためにやるか」を社内に置いた点は同じです。ここさえ揃っていれば、外注の範囲は事業の状況に合わせて広げても縮めても構いません。
費用はどう変わるか
外注費の相場は、依頼する工程の数で決まります。投稿代行だけなら月額10万円以下、運用をまとめて任せるなら月額20〜50万円、戦略設計と分析まで含めると50万円以上という水準が、複数の比較メディアで示されています(出典:stock-sun/BOXIL)。初期費用が別途かかること、広告費は運用費と別建てになることも共通しています。
ここで確認したいのは、金額そのものよりその見積もりが8工程のどれを含んでいるかです。同じ「月20万円」でも、①②を含むか④⑤だけかで中身はまったく違います。とくに⑦は注意が要ります。「分析レポート込み」と書かれていても、管理画面の数字を表に転記するところまでか、他社水準との比較と改善提案まで入るかで、中身は別物です。工程で分解してから比べれば、見積もりは正しく読めます。
よくある質問
Q. 担当者が1人しかいません。内製は無理でしょうか。 1人でも、①戦略と⑧意思決定を握り、④⑤⑦を外に出せば回ります。逆に1人で8工程すべてを持たせると、その人が休んだ日に運用が止まります。人数ではなく、持たせる工程の数で考えてください。
Q. 外注するとノウハウが社内に残らないのでは。 残らないのは、①戦略設計まで外に出した場合です。①を社内で握り、外部から月次で「何が効いたか」の報告を受ける形にすれば、判断の経験は社内に蓄積します。契約時に、レポートで示してもらう項目を決めておくと確実です。
Q. 契約はどのくらいの期間から始めるべきですか。 SNSは成果が出るまでに時間がかかるため、数か月単位の契約が一般的です。ただし最低契約期間と解約条件は、始める前に必ず確認してください。工程の追加・削減が途中でできるかどうかも、あわせて確認しておくと安心です。
Q. 外注しても、炎上したときの責任は誰が持ちますか。 発信主体である自社です。監視や一次報告を外部に任せていても、会社名で出す発信の責任は移りません。だからこそ、対応方針の決定と謝罪の主体は社内に置く、と契約時に明文化しておく必要があります。
Q. 分析なら社内でもできそうです。外に出す意味はありますか。 数字を集めるだけなら社内でもできます。外に出す意味は作業を減らすことではなく、比較対象と最新の傾向を借りることにあります。自社のデータだけでは、その数字が業種の水準に対して高いのか低いのかを判定できず、判定できないと次の打ち手も決まりません。外注先を選ぶときは、レポートに他社・他業種との比較と、仕様変化の解釈が入っているかを見てください。
Q. 承認が遅くて投稿が出せません。外注すれば速くなりますか。 なりません。承認段数は外注では変わらないためです。投稿の種類ごとに段数を分ける設計を先に行ってください。それをせずに外注すると、外部の制作物が承認待ちの列に並ぶだけになります。
Q. SNS投稿の承認は誰がするべきですか。 投稿の種類に応じて承認者と段数を分ける考え方があります。日常投稿は担当者と上長の1段、商品紹介・キャンペーンは法務や部門長を交えた2段、価格や効能に触れる投稿・他社名への言及は3段以上、というように分けます。すべてを同じ承認者に通すと、その人が不在の日に運用が止まります。
Q. 外注から内製化するときは、何から始めればよいですか。 制作や投稿の作業を先に戻すのではなく、⑦分析の「判断」の部分から始める方法があります。比較データの提供は外部に任せたまま、数字の良し悪しと次の打ち手を自分たちで判断できるようにし、それができたら②企画の一部、④編集の一部の順に戻すという進め方です。同時に、承認ルール表とアカウントの権限を自社に残すことを、外注を始める時点から決めておくと、戻す作業自体が止まりません。
自社の体制を見直すときに
体制を見直すときは、次の5点を書き出すところから始めてください。この5つが揃うと、8工程のどこを外に出すべきかはほぼ機械的に決まります。
- 店舗数(本部と店舗のどちらが発信主体か)
- 運用している媒体の数
- 投稿1本あたりの承認段数
- 月間の投稿本数(計画と実績の両方)
- SNS専任者の有無(兼務なら、業務全体に占める割合)
当社ではSNS運用の代行に加えて、体制の切り分けそのもののご相談も承っています。上記5点を添えてご相談いただくと、初回のやり取りから具体の議論に入れます。サービスの内容はSNS運用代行サービスをご覧ください。内製で十分と判断できる場合は、その旨をお伝えします。