庁舎のロビーに入れたデジタルサイネージが、半年後に見に行くと同じ画面のままになっている。導入したときの意気込みを知っているだけに、担当課の方も言いにくそうにしています。
この現象を「職員が忙しいから」「操作が難しいから」で説明すると、対策は研修と操作マニュアルになります。ところが研修をしても、翌年また同じ状態に戻ることが少なくありません。
当社は公共空間でサイネージの導入と運用に関わってきました。そこで見てきた分かれ目は、もう少し身も蓋もないものです。
続いている現場は、効果が目に見えています。 「あの画面で知った」という街の声が返ってくる。あるいは、その場所のランドマークとして扱われている。そしてもうひとつ、広告が入っている案件は続きます。 収入があるからです。
逆に止まる案件は、更新の作業が契約のどこにも入っていません。顧客側で運用することになり、熱意のある担当者がいるうちは回りますが、その方が異動するとノウハウが切れ、新しいコンテンツが作られなくなります。
この記事では、その分かれ目を先に整理したうえで、続く形をつくるための契約と予算の選択肢を、地方自治法の条文と総務省の通知を確認しながら見ていきます。店舗向けの運用設計は店舗売上を伸ばすデジタルサイネージ運用|失敗しない7つの設計で扱っているので、本記事は自治体に固有の部分だけを書きます。
結論:自治体のサイネージは「買い方」で運用の寿命が決まる
先に3つ書きます。
- 続くかどうかを分けているのは、効果が見えているかと、収入があるかです。 街の声が返ってくる、ランドマークになっている、広告が入っている。この3つのどれかがある案件は続きます
- 止まる案件は、更新の役務が契約のどこにも入っていません。 顧客側の運用になり、担当者の熱意で持たせている状態は、異動でノウハウごと切れます
- 単年度の物品購入そのものは、悪ではありません。 実務ではこれがほとんどで、購入した機器は資産として減価償却されます。問題は機器の買い方ではなく、更新の役務を別立てで設計していないことです。複数年で調達する制度(地方自治法234条の3の長期継続契約)は、そのための選択肢のひとつです
「設置して終わり」が、自治体でとくに起きやすい理由
サイネージ運用が失敗する典型として、7つの設計では「設置放置(コンテンツが更新されない)」を最初のパターンに挙げました。これは業種を問わず起きます。
ただ、民間の店舗と自治体では、止まり方が違います。
自治体側にとって、サイネージは売上に直結しません。だから「効いている」という実感が、続けるかどうかの判断をそのまま左右します。街で「あれ見たよ」と言われる、庁舎や駅前の目印として扱われる。こうした手応えがある案件は、多少手間でも更新が続きます。逆に、誰も見ていないように感じられた瞬間から、優先順位が落ちていきます。
もうひとつ効くのが収入です。広告が入っている案件は、更新が事業として回るので続きます。
そのうえで、続けたい状態を契約の形にしておかないと、担い手が消える。ここが自治体に固有の部分です。外部の事業者や指定管理者に担わせたい作業が仕様書・協定書に書かれていなければ、それは履行の対象になりません。職員が自分の課の業務として更新するなら、担当課・頻度・権限を内部のルールとして決めておく必要があります。どちらも決めていないと、異動でその人がいなくなった時点で止まります。
自治体の契約は、一般競争入札が原則
まず前提として、自治体の契約方法は法律で決まっています。
第二百三十四条 売買、貸借、請負その他の契約は、一般競争入札、指名競争入札、随意契約又はせり売りの方法により締結するものとする。 2 前項の指名競争入札、随意契約又はせり売りは、政令で定める場合に該当するときに限り、これによることができる。 (地方自治法 第234条)
一般競争入札が基本で、指名競争入札・随意契約・せり売りは、政令で定める場合に限った例外です。随意契約の要件は地方自治法施行令167条の2に列挙されており、少額のもの、性質・目的が競争に適さないもの、既存システムとの互換性が要るものなど、要件を満たせば随意契約の余地は残ります。
実務にとっての意味はこうです。「今回うまくいったから、来年も当然に同じ事業者へ」とはできません。 随意契約にするなら、施行令167条の2のどの号に当たるのかを説明できる状態にしておく必要があります。
民間であれば、運用が軌道に乗った相手との取引をそのまま続けられます。自治体では、翌年度あらためて調達手続きに乗ることになり、事業者が変われば、それまで積み上げた運用の勘所は引き継がれません。CMSのアカウントも、素材の元データも、更新の段取りも、契約書に書いていなければ移りません。
つまり、最初の仕様書で決めきる度合いが、民間よりずっと重いということです。
単年度で買うか、複数年で買うか
先に断っておくと、単年度の物品購入が悪いわけではありません。 実務ではこれがいちばん多い形ですし、購入した機器は資産として計上され、耐用年数にわたって減価償却されます。会計上は複数年で費用化されるので、買い切り自体が不合理ということはありません。
問題になるのは、機器の隣にある更新の役務です。ここを別立てで設計していないと、翌年度以降に誰も手をつけられなくなります。以下は、その役務を年度をまたいで確保するための選択肢です。
複数年度にわたる支出をあらかじめ予定する場合、典型は債務負担行為(地方自治法214条)で、議会の議決が要ります。年度をまたぐ制度はほかにも継続費(212条)や繰越明許費(213条)があり、それぞれ使いどころが違います(このあたりは地域マーケのKPI設計詳解で条文ごとに整理しています)。サイネージの調達では、まず債務負担行為か長期継続契約かを検討することになります。
長期継続契約(地方自治法234条の3)
第二百三十四条の三 普通地方公共団体は、第二百十四条の規定にかかわらず、翌年度以降にわたり、電気、ガス若しくは水の供給若しくは電気通信役務の提供を受ける契約又は不動産を借りる契約その他政令で定める契約を締結することができる。この場合においては、各年度におけるこれらの経費の予算の範囲内においてその給付を受けなければならない。 (地方自治法 第234条の3)
読みどころが2つあります。
ひとつは冒頭の「第二百十四条の規定にかかわらず」です。長期継続契約は、債務負担行為の設定を省ける制度として置かれています。
もうひとつは後段の「各年度におけるこれらの経費の予算の範囲内においてその給付を受けなければならない」です。長期継続契約は、債務負担行為のように翌年度以降の支出を担保する制度ではありません。 各年度の予算の範囲内で給付を受けるため、実務では、予算が減額・削除されたときに契約を変更・解除できる条項を置く運用が一般的です。「一度契約すれば予算は自動でつく」と誤解したまま設計すると、2年目以降の履行継続に支障が出ます。
なお、条文の本文に直接列挙されている電気・ガス・水の供給、電気通信役務、不動産の賃借は、この条だけで長期継続契約にできます。条例が要るのは、次に見る「その他政令で定める契約」のほうです。
「その他政令で定める契約」の中身
条文の「その他政令で定める契約」は、施行令で次のように定められています。
第百六十七条の十七 地方自治法第二百三十四条の三に規定する政令で定める契約は、翌年度以降にわたり物品を借り入れ又は役務の提供を受ける契約で、その契約の性質上翌年度以降にわたり契約を締結しなければ当該契約に係る事務の取扱いに支障を及ぼすようなもののうち、条例で定めるものとする。 (地方自治法施行令 第167条の17)
サイネージ調達では、この要件が分岐点になります。法の本文に列挙された契約とは別に、施行令で追加される対象は「物品を借り入れ」または「役務の提供を受ける」契約であり、しかも「条例で定めるもの」に限られます。
純粋な機器の買い取りは、ここに入りません。 購入契約は物品の借入れでも役務の提供でもないためです。ただし、これは「買い取りを含む案件は複数年で組めない」という意味ではありません。機器の購入部分と保守・運用の役務を分けて契約する、機器をリースに切り替える、債務負担行為を設定する、といった設計は別にあり得ます。
つまり、機器を購入しただけでは、翌年度以降の更新役務まで自動的に確保されるわけではない、ということです。
総務省の通知が挙げた想定例
この規定は平成16年の改正で入りました。改正時の総務省 自治行政局長通知には、想定される契約の例が書かれています。
上記(1)に該当する契約としては、商慣習上複数年にわたり契約を締結することが一般的であるもの、毎年4月1日から役務の提供を受ける必要があるもの等に係る契約が対象になるものであること。例えば、OA機器を借り入れるための契約、庁舎管理業務委託契約等が想定されるものであること。 (総務省 自治行政局長通知「地方自治法の一部を改正する法律等の施行について」平成16年11月10日)
同じ通知は、契約期間についても釘を刺しています。
更なる経費の削減やより良質なサービスを提供する者と契約を締結する必要性にかんがみ、定期的に契約の相手方を見直す機会を確保するため、適切な契約期間を設定する必要があることに留意すべきものであること。
長期継続契約は「一度取ったら安泰」の制度ではありません。見直しの機会を確保するために期間を適切に切る、というのが国の立場です。
条例の書きぶりが分岐点になる
対象は条例で定めるものに限られるので、実際に何が長期継続契約にできるかは自治体ごとに違います。たとえば広島市の条例は、対象をこう定めています。
一 物品を借り入れる契約のうち、商慣習上複数年度にわたり契約を締結することが一般的であるもの 二 役務の提供を受ける契約のうち、施設の管理業務その他の毎年4月1日から年間を通じて継続的に役務の提供を受ける必要がある業務に係るもの (広島市 長期継続契約を締結することができる契約を定める条例)
この2号構成は多くの自治体で見られる形です(※以下の「第1号/第2号」は施行令の号ではなく、この広島市条例の区分です)。サイネージに当てはめると、次のように分かれます。
★印の行が、この記事の主題です。機器を借りる部分は複数年で調達できるのに、中身を更新し続ける役務だけが単年度に取り残される、という形になりやすい。そうなると1年目は動き、2年目から止まります。
条例の対象に読み込めるかどうかは、財政課・契約課の判断です。設計の早い段階で相談してください。読み込めない場合は、債務負担行為を設定して複数年で組む、という別の道があります。債務負担行為をはじめとした年度をまたぐ予算の道具立ては、地域マーケのKPI設計詳解で条文ごとに整理しているので、そちらをご覧ください。
4つの選択肢の比較
「長期継続契約(役務)」を△〜○にしているのは、条例に載っているだけでは足りないからです。施行令167条の17は「その契約の性質上翌年度以降にわたり契約を締結しなければ……事務の取扱いに支障を及ぼすようなもの」も要件にしています。更新業務が催事単位・キャンペーン単位で、年間を通じて必要とは言いにくい形だと、単年度委託や債務負担行為に回る場合があります。
なお、複数年度で組む道はこの4つに限りません。施設の運営と一体で考えるなら指定管理(法244条の2)、大型の整備や広告収入型ならPFI、庁舎全体の維持管理と束ねるなら包括管理委託、といった選択肢もあります。サイネージ単体では長期継続契約と債務負担行為が中心になりますが、案件の規模と一体性によって適する制度は変わります。
仕様書に「運用」を書けているか
調達の形が決まったら、次は仕様書です。ここでいちばん多い取り違えを先に書きます。
「保守」と「運用」は別物です。
- 保守=機器が壊れずに映り続けること。故障対応、部品交換、ソフトウェア更新
- 運用=画面の中身が変わり続けること。コンテンツの企画、制作、差し替え、緊急時の割り込み
保守だけを書いた仕様書からは、中身が変わり続ける状態は出てきません。映っているけれど半年前の内容のまま、という状態は、仕様書どおりに履行されている状態です。
書き漏らしやすい項目を並べます。調達前のチェックリストとして使ってください。
最後の「契約終了時の扱い」は、一般競争入札が原則である以上、必ず起きる論点です。事業者が変わるたびに素材とアカウントを作り直していると、そのぶんの費用と時間が毎回かかります。移行手順を最初の仕様書に書いておくことが、長期的にはいちばん効きます。
素材を面ごとに作り直さずに回す考え方は、販促素材のワンソース・マルチユース設計で扱っています。1枚の中の情報量と並び順は、サイネージのコンテンツ設計をご覧ください。
誰が更新するか:3つの類型
更新の担い手は、大きく3つに分かれます。どれが正しいということはなく、施設の性質と更新頻度で選びます。
類型1:職員が更新する
向いているケース:更新頻度が低く(月1〜2本)、内容が定型的なもの。窓口案内、開庁時間、定例のお知らせ。
注意点:人事異動でノウハウが消えます。操作できる職員を常に複数人置くことと、テンプレートを用意して「文字を差し替えるだけ」の状態にしておくことが前提になります。研修だけでは続きません。
類型2:指定管理者が更新する
向いているケース:図書館、文化施設、体育館など、指定管理者が日常運営を担っている施設。館の催しと画面の中身が近く、更新の動機が現場にあります。
注意点:指定管理は地方自治法244条の2の枠組みで、指定期間が複数年度にわたること自体はよくあります。したがって、サイネージの更新を指定管理業務・自主事業・別途委託のどこに位置づけるかで整理が変わります。指定管理業務として継続的に担わせるなら、募集要項・基本協定・年度協定・指定管理料の積算に明記してください。書かれていない業務は、指定管理者にとっては持ち出しです。指定管理期間とサイネージの契約期間がずれていると、担い手が途中で変わります。
類型3:運用を委託する
向いているケース:更新頻度が高い、複数施設に展開している、観光や誘客のように成果を求められている場合。
注意点:委託範囲を工程で切っておくことです。企画まで出すのか、支給された素材を配置するだけなのかで、費用も成果も変わります。工程の切り分け方は、デジタルサイネージ運用は内製か外注かで4つの判断軸として整理しています。
複数の類型を混ぜることもできます。定例の案内は職員、観光や催しの訴求は委託、といった分け方です。その場合は、どちらが何を出すのかを画面の枠単位で決めておかないと、割り込みのたびに調整が発生します。
広告を載せて費用を賄えるか
「維持費を広告収入で賄えないか」というご相談をよくいただきます。制度上、道はあります。ただし前提の確認が要ります。
整理が2通りに分かれます。民間事業者が庁舎などの一部を使って自前の機器を設置・占用する場合は、行政財産の使用許可や貸付けの整理が問題になります。一方、自治体が所有する機器の広告枠を売るだけなら、広告掲載要綱や広告取扱いの委託契約、歳入の扱いとして整理されることが多く、使用許可の話にはなりません。指定管理やPFIの枠組みの中で処理される場合もあります。
前者の場合に関わるのが、次の条文です。
7 行政財産は、その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができる。 (地方自治法 第238条の4第7項)
「用途又は目的を妨げない限度において」が条件です。そして、許可は取り消され得ます。
9 第七項の規定により行政財産の使用を許可した場合において、公用若しくは公共用に供するため必要を生じたとき、又は許可の条件に違反する行為があると認めるときは、普通地方公共団体の長……は、その許可を取り消すことができる。 (地方自治法 第238条の4第9項)
取消しの事由は「公用・公共用に供するため必要を生じたとき」または「許可の条件に違反する行為があると認めるとき」で、いつでも自由に取り消せるという意味ではありません。ただし、設置費用を事業者が負担して広告収入で回収する設計にするなら、取消しの事由・残存価値・撤去費・精算や補償の扱いを、許可の条件と契約の両方で確認しておく必要があります。
あわせて確認すべきものが2つあります。ひとつは広告掲載の基準です。多くの自治体が広告掲載要綱や掲載基準を定めており、業種や表現に制限があります。もうひとつは屋外広告物法・屋外広告物条例で、屋外に設置する場合は許可が必要になり、表示方法(動画の可否など)にも自治体ごとの扱いがあります。
ここは自治体ごとの差が大きい領域です。「他市でできたから」で進めず、当該自治体の要綱と条例を最初に確認してください。
何を測るか
自治体のサイネージは、売上のような単一の数字に接続しにくい設置面です。それでも「見られたか」「行動が変わったか」は測れます。
掲出面ごとの条件差をそろえて比較する設計と、AIカメラやUTMを使った計測の実装は、サイネージ効果測定の設計で扱っています。測る手段そのものは業種を問わず共通なので、本記事では繰り返しません。
自治体に固有の論点は、その計測手段に予算がつくかどうかです。ここで測れる範囲が決まり、結果としてKPIの射程も決まります。交付金や補助金を財源にする場合の指標の作法は、地域マーケのKPI設計詳解をご覧ください。
実務で見てきたこと
当社は自治体・公共空間にサイネージを納入し、運用に関わってきました。守秘の関係で個別の自治体名は出せませんが、複数の案件を通して見えている構造を、制約・判断・結果・再現条件の形で書きます。
- 制約:自治体の調達は、ほとんどが単年度の物品購入です。機器は資産として減価償却されるので、買い方としては自然な形でもあります。一方で、コンテンツを更新し続ける役務は、そこに含まれていないことが多くあります
- 判断:当社は、導入時にコンテンツの更新を常に提案しています。設置だけでは「映っているが変わらない画面」になることが分かっているためです
- 結果:更新が契約に入らなかった案件は、顧客側での運用になります。熱意のある担当者がいるうちは回りますが、その方が異動するとノウハウが断絶し、新しいコンテンツが作られなくなるのがたいていの経過です。逆に続いている案件に共通しているのは、①街で「あれを見た」という声が返ってくる、②その場所のランドマークとして扱われている、③広告が入っていて収入がある、のいずれかでした
- 再現条件:更新の役務を契約に入れること。そのうえで、効果が誰かの目に見える形(街の声、来庁者の反応、掲出報告)を最初から用意しておくこと。広告を入れられる施設なら、収入の設計を初期に検討すること
★この3つ目が実務では大きい、というのが正直なところです。制度をどう組んでも、「効いている」と誰も思わなければ、更新の優先順位は落ちます。制度設計は、続けたいと思ったときにそれを可能にするための準備であって、続けたいと思わせる力そのものではありません。
参考までに、公共性のある空間での運用例として、大型マンションの共用部にサイネージとタブレットを入れ、近隣施設の情報や館内イベントを配信した事例があります。100本以上のコンテンツを配信し、対象居住者の3割がイベントに参加するところまで動きました(マンション居住者向けに、タウンビジョンとサイネージでコミュニティ形成を支援)。イベントの様子を取材してコンテンツに戻すという循環を作れたことが、更新が続いた理由です。
まとめ・関連記事
自治体・公共施設のサイネージについて、本記事の要点は次の3つです。
- 続くかどうかを分けているのは、効果が見えているかと収入があるか。 街の声、ランドマーク化、広告収入。制度をどう組んでも、「効いている」と思われなければ更新の優先順位は落ちます
- 止まる案件は、更新の役務が契約に入っていない。 顧客側の運用を担当者の熱意で持たせている状態は、異動でノウハウごと切れます。仕様書では「保守」と「運用」を分けて書き、更新の頻度・担い手・緊急時の割り込み・契約終了時の移行手順まで書ききってください
- 単年度の物品購入そのものは悪ではない。 機器は資産として減価償却されます。複数年で確保したいのは機器ではなく更新の役務で、その手段が長期継続契約(地方自治法234条の3)です。施行令167条の17で追加される対象は「物品の借入れ」または「役務の提供」で、条例で定めたものに限られます(電気・ガス・水・電気通信役務・不動産賃借は条文本文にあるので条例を待ちません)
- 店舗売上を伸ばすデジタルサイネージ運用|失敗しない7つの設計:業種共通の運用7原則と失敗パターン
- 飲食店のデジタルサイネージ活用|時間帯とメニューで売上に効かせる運用設計:業種別・飲食編
- 小売店のデジタルサイネージ活用|商品連動と効果検証で売場を動かす運用設計:業種別・小売編
- サイネージ効果測定の設計|掲出面の条件差を揃える比較設計と計測の実装:測り方の実装
- サイネージのコンテンツ設計|3秒で伝わる情報の並び順:1枚の作り方
- デジタルサイネージ運用は内製か外注か|自社の選び方を判断する4軸と工程分解:委託範囲の切り分け
- 地域マーケのKPI設計詳解|「測りにくいが意味のある指標」を制度に通す手順:交付金・年度予算とKPIの接続
- 地域マーケティングとは|地方企業・自治体が押さえる全体設計:上位の全体設計
- マンション居住者向けに、タウンビジョンとサイネージでコミュニティ形成を支援:更新が続いた運用の実例
サイネージの調達や運用の設計でご相談があれば、お問い合わせからご連絡ください。仕様書の書き方だけのご相談でも承ります。
よくある質問(FAQ)
Q1: 長期継続契約にすれば、毎年度の予算措置は不要になりますか? なりません。地方自治法234条の3の後段に「各年度におけるこれらの経費の予算の範囲内においてその給付を受けなければならない」とあり、各年度の予算は必要です。長期継続契約が省くのは債務負担行為の設定であって、予算そのものではありません。債務負担行為と違って翌年度以降の支出を担保する制度ではないため、実務では予算が減額・削除されたときの変更・解除条項を置くのが一般的です。
Q2: 機器を購入する契約は、長期継続契約にできますか? 純粋な購入契約は対象外です。施行令167条の17が対象としているのは「物品を借り入れ又は役務の提供を受ける契約」で、買い取りはどちらにも当たりません。ただし案件全体が複数年で組めないという意味ではなく、購入部分と保守・運用の役務を分ける、リース(借入れ)に切り替える、債務負担行為を設定する、といった設計は可能です。
Q3: コンテンツの更新業務は長期継続契約の対象になりますか? 自治体の条例次第です。多くの条例は「役務の提供を受ける契約のうち、施設の管理業務その他の毎年4月1日から年間を通じて継続的に役務の提供を受ける必要がある業務」といった書き方をしています。更新業務がここに読み込めるかは、財政課・契約課の判断になります。設計の早い段階で相談してください。
Q4: 契約期間は何年にするのが妥当ですか? 一律の正解はありません。総務省の通知は「定期的に契約の相手方を見直す機会を確保するため、適切な契約期間を設定する必要がある」としています。機器のリース期間、指定管理期間、更新の習熟に要する期間をそろえて考えるのが実務的です。
Q5: 更新を続けるために、いちばん効くことは何ですか? 効果が誰かの目に見える状態を作ることです。街で「あれを見た」と言われる、来庁者の反応が担当課に届く、掲出の報告が定期的に上がる。こうした手応えがある案件は、多少手間でも更新が続きます。あわせて、広告を入れられる施設なら収入の設計を初期に検討してください。収入がある案件は事業として回るので続きます。
Q6: 職員が更新する形と、委託する形はどちらが良いですか? 更新頻度と内容で決まります。月1〜2本の定型的な案内であれば職員でも回りますが、テンプレートを用意し、操作できる職員を複数人置くことが前提です。頻度が高い、成果を求められている、複数施設に展開している場合は委託が向きます。工程ごとの切り分けは内製か外注かの記事をご覧ください。
Q7: 広告収入で維持費を賄う方式は使えますか? 制度上は可能ですが、整理が2通りに分かれます。事業者が庁舎の一部を使って自前の機器を設置する場合は、行政財産の使用許可(地方自治法238条の4第7項)や貸付けの話になり、公用・公共用に必要が生じたときや許可条件に違反したときは取り消され得ます(同条第9項)。自治体所有の機器の広告枠を売るだけなら、広告掲載要綱や広告取扱いの委託として整理されることが多く、使用許可の話にはなりません。いずれも広告掲載基準や屋外広告物条例の確認が必要で、自治体ごとの差が大きいため、他市の事例をそのまま持ち込まないでください。
参考文献
- 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第234条・第234条の3・第238条の4(e-Gov法令検索、取得日:2026-08-30)
- 地方自治法施行令(昭和二十二年政令第十六号)第167条の17(e-Gov法令検索、取得日:2026-08-30)
- 総務省「地方自治法の一部を改正する法律等の施行について(通知)」平成16年11月10日 自治行政局長通知 https://www.soumu.go.jp/main_content/000025906.pdf
- 広島市「長期継続契約を締結することができる契約を定める条例」 https://www.city.hiroshima.lg.jp/kikaku/houki/reiki_int/reiki_honbun/r500RG00001117.html
- 一般財団法人 地方自治研究機構「長期継続契約と債務負担行為」 https://www.rilg.or.jp/htdocs/main/houmu_qa/2010/23_winter02.html
最終更新日:2026-09-01/初回公開 著者:後藤晃(株式会社デジタルプロモーション 代表取締役社長)。駅前・街頭のデジタルサイネージ網「タウンビジョン」を全国展開し、サイネージ×SNS×地域メディアで商圏に面を作る事業を統括。著書『マーケティングで挑む地域創生』(2025年)。