AIを使いたい。ただ、どこに頼めばいいのか分からない。
当社にも、この形の相談が増えています。検索すると「AI顧問」「AIコンサルティング」「AI受託開発」が並んでいて、どれも自社の課題に効きそうに見える。料金の出し方もばらばらで、比べようがない。そういう状態です。
比較記事も一通り読まれていると思います。ただ、それらはほぼ例外なく提供者側の分類で説明されています。顧問は伴走型、コンサルは戦略型、受託は開発型。正しいのですが、これを読んでも決められません。読者が知りたいのは「この3つはどう違うか」ではなく「うちはどれなのか」だからです。
この記事では、3つの形を成果物と費用で並べ直したうえで、選び分けの軸を1つに絞ります。そして、その軸をめぐって業界の見解が真っ二つに割れている論点を正面から扱います。地方で実際に手を動かしている立場から、どちらが正しいのかを書きます。
結論:違いは「関与の深さ」ではなく、誰が手を動かすか
先に結論です。
3つの違いは、関与の深さの差ではありません。成果物を誰が作るかの差です。
- AI顧問:手を動かすのは自社。外部は方向を示し、詰まったところを外す
- AIコンサル:手を動かすのは外部。作るのは主に資料(戦略・計画・要件)ですが、PoCの実装や社内教育、推進の事務局まで請ける会社もあります
- 受託開発:手を動かすのは外部。作るのは動くもの(システム・ツール)。要件定義から含む契約もあります
ここが分かると、選び分けの軸も1つに決まります。
自社の中に、受け取って動かす人がいるか。
いれば顧問が最も安く速く効きます。いなければ、顧問を入れても助言が宙に浮きます。──というのが定説です。ところが、この定説には正面から反対する立場があり、業界で意見が割れています。後半でそこを扱います。
3つの形を、成果物で並べ直す
まず、言葉を揃えます。
ひとつ補足します。AIコンサルの範囲は会社によってかなり違います。資料の納品で終わる会社と、PoCの実装や教育まで伴走する会社が、同じ「AIコンサルティング」の名前で並んでいます。見積を取るときは、資料納品型なのか実装伴走型なのかを必ず確認してください。受託開発も同様で、要件定義から含む契約と、要件が固まっている前提の契約があります。
そのうえで、この表で見ていただきたいのは、最後の行です。3つはそれぞれ別のつまずき方をします。自社がどのつまずき方をしやすいかで選ぶのが、いちばん外しません。
たとえば、過去に外部コンサルを入れて分厚い資料が残っているだけの会社は、もう一度コンサルを入れても同じことが起きます。逆に、社内で試したがバラバラに使われて収拾がつかない会社は、受託開発を発注しても要件が固まりません。
費用の相場と、相場表の読み方
公開されている料金レンジを突き合わせると、おおよそ次の幅に収まります。
(2026年9月時点で、提供各社が公開している料金ページと、当社に寄せられた相談の内容を突き合わせて整理したものです。個別の条件で大きく動きます)
この表の使い方には、注意が2つあります。
ひとつは、上限はほとんど参考になりません。受託開発の上限は青天井で、2,000万円はあくまで中堅規模の目安です。見るべきは下限のほうです。
もうひとつは、下限の開きが大きいことです。戦略策定であれば、40万円台から始まる会社と、100万円台からという会社が並んでいます。同じ「戦略策定」で2倍以上の差です。この差は品質の差ではなく、多くの場合「どこまでを成果物に含めるか」の差です。安いほうは現状整理まで、高いほうは実行計画と体制設計まで、といった違いです。金額だけを並べても比べられません。成果物の定義を揃えてから比べてください。
費用の内訳と、内製に振ったほうが安くなる条件については、当社のAI内製化の4か月で、実際に自社でやった記録を公開しています。
見解が分かれています:推進担当ゼロの会社に、AI顧問は効くか
ここからが本題です。
先ほど「受け取って動かす人がいなければ顧問は機能しない」と書きました。これはAI顧問を提供している会社自身が、繰り返し書いていることでもあります。ある解説記事は、社内体制の章でこう言い切っています。
AI顧問を入れたとしても、社内に受け手となる担当者がいなければ提案は絵に描いた餅になります。これが中小企業のAI顧問導入失敗の最大の原因といっても過言ではありません
きわめて真っ当です。助言は、受け取って実行する人がいてはじめて成果になります。
ところが、まったく逆のことを書いている会社も、同じくらいあります。
外部AI推進室としてAI顧問を活用すれば、社内に専任部署がなくても(中略)進めることができます
こちらは「担当がいないからこそ、外部を推進役として置く」という立場です。
同じ「AI顧問」という商品について、正反対の説明が並んでいます。 そして、当社が読んだ範囲では、どちらが正しいのかを条件つきで裁いたものはありませんでした。読者からすれば、探せば探すほど反対の答えが出てくる状態です。
地方企業の条件で裁くと、どうなるか
当社の答えは、条件付きで前者(担当がゼロなら顧問は機能しない)です。ただし、その「担当」の定義を、世の中の記事よりかなり低く置きます。
結論から言うと、必要なのはAIに詳しい人ではありません。次の2つを満たす人が1人いれば足ります。
- 社内の業務のどこが面倒かを知っている
- その業務のやり方を変える権限を持っているか、権限者にすぐ届く
専任である必要はありません。他の仕事と兼務で構いませんし、情報システム担当である必要もありません。むしろ現場の業務を握っている人のほうが向きます。
ただし、1人で足りるのは対象の業務が1つの部署の中で閉じている場合です。顧客データや個人情報を扱う、複数部門の手順を同時に変える、といった話になると、関係部署の責任者を巻き込まないと進みません。最初の1つを1人で始めて、広げるときに人を足す、という順番が現実的です。
なぜこの2つかというと、AI導入で実際に詰まるのは技術ではなく業務のやり方を変えるところだからです。要約を出せるようになっても、その要約を使う前提で会議の進め方を変えなければ、工数は減りません。この変更を通せる人がいないと、どれだけ良い助言も宙に浮きます。
そして、この条件で見ると「外部AI推進室」の立場にも一理あることが分かります。外部が推進役になれるのは、上の2番目──やり方を変える権限──が社長に直結している場合です。 社長が対象業務の意思決定者で、その場でやり方の変更を決められるなら、専任の担当がいなくてもこの形は成立します。社長本人が受け手になるからです。
目安としては社員30人前後までの会社で成り立ちやすいのですが、人数だけでは決まりません。 20人でも店舗や工場が分かれていて社長が現場を握っていない会社はありますし、50人でも社長が全部の承認を握っている会社はあります。見るべきは人数ではなく、その業務の変更を社長がその場で決められるかです。
逆に、社員が100人を超えて部門が分かれてくると、外部の推進役だけでは通りません。部門をまたいで業務のやり方を変える話になり、外部の立場では決められないからです。この規模では、社内に受け手を置いてから顧問を入れるほうが早く回ります。
まとめると、こうです。
- 社長が対象業務の意思決定者で、その場で変更を決められるなら、担当ゼロでも顧問は機能します
- 部門をまたいで調整が要るなら、受け手を1人決めてから顧問を入れてください
- どちらでもない状態(社長は忙しくて入れない、受け手も決まっていない)で顧問を入れると、月額だけが積み上がります
向く条件と、向かない条件
正直に書きます。当社はAI活用の顧問をお受けしていますが、向かない状態もはっきりあります。
最後の2行が、この記事で最も伝えたい部分です。
「丸ごと任せたい」という要望は、AI活用では満たせません。 正確に言うと、外部化できる部分とできない部分があります。ツールの運用、データの整備、素材の制作、保守は外部に任せられます。任せられないのは、業務のやり方をどう変えるかという判断と、その承認です。ここを外部に預けたまま導入した場合、作ったものが使われないという形で必ず表面化します。
そして、議事録の要約や文書の下書きから始めたいだけなら、外部に相談する前にやってください。 月額数千円のツールで足ります。ただし、顧客情報や個人情報、まだ公表していない情報を入力する可能性があるなら、入れてよい情報の線引きと、ツール側の保存設定だけは先に決めてください。ここは業種によっては外部の助けが要ります。どこから手をつけるべきかはAI導入の着手順で整理しています。
ミスマッチが起きる3つの典型
相談を受けていて、繰り返し見る形が3つあります。
1. コンサルを頼んだのに、実行まで期待していた
戦略資料は納品されました。しかし社内では動きません。これは提供側が悪いのではなく、契約時点で成果物の定義がずれていたケースです。見積を取るとき「この費用で、最後に何が手元に残りますか」と聞いてください。資料なのか、動くものなのか、社内で回る状態なのか。3つは別物です。
2. 受託開発を頼んだのに、要件が固まっていなかった
「AIで業務を効率化したい」の状態で開発を発注すると、要件定義の工程が丸ごと追加されるか、作り直しになります。作るものが決まっていない段階では、開発は最も高くつく選択肢です。 この段階では顧問かコンサル、あるいは自社で小さく試すほうが安く済みます。
3. 顧問を入れたのに、社内に届いていない
月1回の打ち合わせで助言をもらう。その場では納得する。しかし翌月も同じ状態から始まる。前の章で書いた「受け手」がいない状態です。この場合、顧問を止めるより先に、社内で誰が受け取るかを決めてください。 それだけで同じ顧問が効き始めることがあります。
内製と外注の分かれ目そのものについては、SNS運用を題材に工程分解と承認フローで判断する方法をSNS運用は内製か外注かで書いています。考え方はAIでも同じです。
契約の前に確認しておくこと
選ぶ側があまり知らされていない線が、いくつかあります。
資格は必須ではありません。
AIコンサルティングに必要な公的資格はありません。中小企業診断士は経済産業大臣の登録に基づく名称独占の資格で、経営の診断・助言の専門家ではありますが、診断士でなければコンサルティングができないという制度ではありません。つまり資格の有無だけでは選べないということです。実績と、担当者が誰かで見てください。
契約書のレビューは、どこまでかを確認してください。
弁護士法72条は、報酬を得る目的で法律事務を業として扱うことを、弁護士以外に禁じています。契約書の一般的な注意点を説明する、論点を整理する、弁護士に相談する材料を用意する。ここまでは通常問題になりません。線を越えるのは、個別の案件について法的な判断まで踏み込むときです。AI顧問の提案に「契約書のリーガルチェックも行います」と広く書かれている場合は、どこまでを指すのか、弁護士に振る体制があるのかを聞いておいてください。
顧問なのに指示を出していると、別の問題が起きます。
業務委託でも、成果物・作業範囲・期限を指定することはできます。問題になるのは、受託者側の担当者に対して、自社の社員と同じように日々の作業手順や勤務時間を直接指示している実態があるときです。この状態が続くと偽装請負の問題になりえます。常駐や稼働が長くなるほど線が曖昧になるので、契約形態と実態を揃えておいてください。
自治体の場合は、委託契約に書いておくべき条項が民間とは別にあります。仕様書の書き方はシティプロモーションの業務委託で、4市の仕様書を読み比べて整理しました。
その前に、無料で使える窓口があります
有償で相談する前に、使える公的窓口があります。この記事の趣旨からすると自社の不利になりますが、書いておきます。
全国のよろず支援拠点に、2026年4月1日、生産性向上支援センターが開設されました。令和8年度は各拠点にAIアドバイザーが配置されています。よろず支援拠点全国本部のサイトには、こう書かれています。
何度でも、無料で、現場へ伺います
課題の大小を問わず何度でも無料で相談できる
AIを使える業務の整理、導入に向けた社内文書やデータの準備、使えそうなサービスの検討まで対応しています。現場訪問型の支援は「無料で複数回の現場訪問」として案内されており、目標を決めて、達成したら支援終了という進め方です。「何から手をつけるか決まらない」段階であれば、まずここで足ります。 有償の相談が必要になるのは、自社の事業に踏み込んだ設計が要るとき、継続的に伴走してほしいとき、実際に作るものがあるときです。
補助金については、2026年から「IT導入補助金」はデジタル化・AI導入補助金に名称が変わりました。ただし、枠ごとに補助上限も補助率も対象経費も違います。ネット上の解説記事は代表的な枠の数字だけを載せていることが多く、そのまま自社に当てはめると外します。とくに顧問料やコンサル費用が対象経費に入るかどうかは、枠と年度で変わります。ツールの導入費用とは扱いが別です。必ず当年度の公募要領で、該当する枠の対象経費を確認してください。
選ぶ前に、自社で決めておく3つ
最後に、見積を取りに行く前に決めておくものを3つに絞ります。ここが決まっていれば、どの相手と話しても比較できます。
1. 受け手を誰にするか
名前を1人決めてください。専任でなくて構いません。社長本人でも構いません。決まっていない状態で見積を取ると、提案の前提がばらばらになって比べられなくなります。
2. 最後に何が手元に残ればよいか
資料か、動くものか、社内で回る状態か。この3つのどれを買うのかを先に決めてください。ここがずれたまま契約するのが、いちばん多い失敗です。
3. いつ終わるか(または、いつ薄くするか)
顧問契約は終わりを決めないまま続きがちです。「自社で回るようになったら月1回に落とす」といった出口を、最初に話しておいてください。出口の話を嫌がらない相手を選ぶことが、そのまま選定基準になります。
まとめ
- 3つの違いは関与の深さではなく、成果物を誰が作るかです
- 選び分けの軸は「受け取って動かす人がいるか」。ただしAIに詳しい人である必要はありません
- 必要なのは、業務の面倒を知っていて、やり方を変える権限に届く人が1人
- 社長が受け手になれる規模なら、担当ゼロでも顧問は成立します。部門が分かれている規模なら、先に受け手を決めてください
- 「丸ごと任せたい」は、どの形でも満たせません
- 議事録や文書作成から試したいだけなら、外部は不要です
- 有償の前に、よろず支援拠点の生産性向上支援センターが無料で何度でも相談に応じます
- 見積を取る前に、受け手・成果物の定義・出口の3つを決めてください
当社は、自社の業務をAIで組み替える作業を実際にやってきました。うまくいったことも、かえって手間が増えたことも、社内の記録として残しています。地方企業と自治体の現場で何が起きるかを踏まえたうえでご相談に乗れます。AI開発・AI活用顧問からお問い合わせください。
AI活用を何から始めるかという全体の設計は、地方企業と自治体のAI活用で整理しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. AI顧問とAIコンサルは、結局どちらが安いですか。
期間によります。月額の顧問は1回あたりの金額が小さいかわりに終わりがなく、コンサルは総額が大きいかわりに終わりがあります。半年で区切るならコンサルのほうが安いこともあります。逆に「決めたいことが次々出てくる」段階では、顧問のほうが結果的に安く収まります。総額で比べるなら、期間を先に決めてください。
Q2. 社内にAIに詳しい人がいません。顧問を入れても意味がないですか。
AIに詳しい人は不要です。必要なのは、業務のどこが面倒かを知っていて、やり方を変えられる人です。社長がその業務の意思決定者で、その場で変更を決められるなら、社長本人が受け手でも成立します。ただし社長が打ち合わせに出られないなら、その状態で顧問を入れても届きません。
Q3. 「AI人材を採用する」のとどちらがよいですか。
採用は、AIで作りたいものが継続的にある場合に効きます。1つ2つの業務を変えたいだけなら、採用のほうが高くつきます。また、採用した人が孤立すると定着しません。先に社内で1つ回してから、採用の要否を判断するほうが失敗しにくくなります。
Q4. 「AI顧問」と「デジタル顧問」は違いますか。
明確な定義の違いはありません。AIに限定するか、Web・データ・業務システムまで含めるかという範囲の差として使われることが多い言葉です。名称ではなく、契約書に書かれた業務範囲で確認してください。
Q5. 契約書のレビューも頼めますか。
弁護士以外が報酬を得て個別の法律判断を行うことは、弁護士法72条で制限されています。一般的な注意点の説明までなら問題ありませんが、個別案件の判断は弁護士に振る体制になっているかを確認してください。「契約書も見ます」と広く書かれている場合は、範囲を聞いたほうが安全です。
Q6. 補助金でAI顧問の費用は出ますか。
枠と年度によります。2026年から「デジタル化・AI導入補助金」に名称が変わりましたが、枠ごとに補助上限・補助率・対象経費が異なります。ツールの導入費用と、顧問料・コンサル費用でも扱いが違います。「補助金が使えるはず」を前提に相談を始めると話がずれるので、先に当年度の公募要領で、該当する枠の対象経費を確認してください。
Q7. CAIO(最高AI責任者)を置くべきですか。
CAIOという肩書きの設置を民間企業に義務づける法令はありません。AIセーフティ・インスティテュートが2026年3月に「Chief AI Officerガイド」を公表していますが、これは体制を整える際の実務指針です。ただし、取引先や業界団体からガバナンス体制の説明を求められる場面は今後増える可能性があります。地方の中小企業の規模であれば、肩書きよりも、受け手を1人決めるほうが先です。
Q8. 複数社から見積を取るとき、何を揃えて比べればよいですか。
3つ揃えてください。①最後に手元に残るもの(資料・動くもの・回る状態)②期間 ③誰が担当するか(提案者と実働者が同じか)。この3つが揃わないまま金額だけを並べると、安いほうが必ず範囲の狭いものになります。
参考文献
- よろず支援拠点全国本部「よろず支援拠点・生産性向上支援センターとは」 https://yorozu.smrj.go.jp/about/
- 経済産業省「よろず支援拠点『生産性向上支援センター』設置の事前予告及び『生産性向上支援サポーター』の公募について」 https://www.meti.go.jp/press/2025/02/20260202001/20260202001.html
- 中小企業庁「デジタル化・AI導入補助金2026の公募要領を公開しました」 https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/hojyokin/kobo/2026/260310001.html
- AIセーフティ・インスティテュート(AISI)「Chief AI Officerガイド」(2026年3月17日公表) https://aisi.go.jp/output/output_framework/260317/
- 弁護士法(昭和24年法律第205号)第72条 https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000205