「SNSの社内ルールを作ってほしいと言われた。何から書けばよいのか分からない」。広報や総務の担当者から、よく聞く相談です。大企業向けの分厚い解説を読むと、項目が多すぎて手が止まります。
本記事は、従業員が数十人から数百人、公式アカウントが数個から店舗ごとまでの会社向けです。ルールの文面を、写して使える形で載せました。【 】の部分を自社の内容に置き換えれば、1枚の文書になります。誰が何段で承認するかといった体制の考え方は、SNS運用は内製か外注かで扱っています。本記事は「文書に何を書くか」に絞ります。
SNS運用ガイドラインは、「会社用の本体1枚」と「店舗スタッフに渡す3項目の短い版」の2段で作ります。 本体には、目的と対象、役割、投稿してよいもの・いけないもの、写真や文章の権利、生成AIの扱い、返信、誤投稿の初動、アカウント管理、見直しの時期を書きます。店舗スタッフには、このうち「出してよいもの」「出してはいけないもの」「迷ったら誰に聞くか」の3つだけを渡します。分厚くするほど読まれなくなるので、本体も1枚に収めます。
1. 結論:本体は1枚、店舗に渡すのは3項目
当社が運用を受けた先で作った投稿ルールは、1枚に30項目ほどでした。中身と取引先は出せませんが、1枚に収まる量でも、運用に必要なことは書き切れます。項目を増やしたくなったときは、ルールではなく説明を書き足していないか、当社は一度見直します。
2段に分ける理由は、読む人と読む場面が違うからです。
- 本体(1枚):広報・総務・店舗の責任者・運用を担当する人が読みます。判断の根拠になる文書です。年に数回見直します
- 店舗に渡す短い版(3項目):投稿するスタッフが、投稿の直前に見ます。覚えるものではなく、手元に置いておく紙です
1枚に収めることを先に決めておくと、「この条は本当に要るか」を判断しやすくなります。次の章から、まず何を作るのかを分けます。
2. 何を作るのかを先に分ける
「SNSのガイドライン」という言葉は、解説によって指すものが違います。Meltwaterは社外向けの2種類と社内向けの1種類に分けています。お名前.comは、ポリシー・コミュニティガイドライン・公式運用・社員向けの4種類に分けています(いずれも出典は末尾に記載)。呼び方は違っても、読み手は3つに分かれます。
- 社外に示す方針:お客様やフォロワーに向けた、コメントの扱いや免責の説明です。アカウントのプロフィール欄やサイトに置きます
- 公式アカウントを動かす人のルール:社員、店舗スタッフ、運用を受ける外部の担当者が守る内部の文書です
- 社員の私的な利用のルール:個人のアカウントで会社や仕事について書くときの決まりです
本記事で扱うのは、2つ目です。ほかの2つは、2つ目ができてから派生させたほうが楽です。公式アカウントの運用ルールが決まれば、社外に示す方針はその要点を書き出すだけで足り、私的利用のルールも、同じ考え方を個人向けに言い換えれば済みます。
3. 公開されている運用ルールの並びを見る
ひな形を作る前に、自治体と大学が公開している運用文書の構成を読みました。文面は写さず、条の並びだけを参考にしています。
- 柳井市「柳井市公式SNS運用ポリシー」:目的、利用するSNSとアカウント、掲載内容、運用時間、コメントへの返信等、注意事項(削除する投稿の類型)、停止または削除、知的財産権、免責事項の順です
- 北海道情報大学「SNS公式アカウント運用に関するガイドライン」:目的、定義、管理体制、運用体制、ホームページへの開示(なりすましへの対応を含む)、遵守事項、協議事項、その他(改訂)の順です
どちらも、先頭が「目的」で、そのあとに「誰が管理し、誰が運用するか」が来ます。さらに、投稿の内容の線引きと、権利、見直しの扱いまで入っています。公共機関の文書なので、運用時間や免責のように民間の企業には不要な条もあります。逆に、民間の企業では、投稿の承認と、誤投稿が起きたときの初動を、もう少し具体的に書く必要があります。この記事のひな形は、この並びを土台に、民間向けに読み替えたものです。
4. ひな形(全文)
使い方は次の3つです。
- 【 】は、自社の内容を入れる空欄です。入れたら【 】の記号は消します
- 「/」で区切った選択肢は、1つだけ残します
- 当てはまらない条は、削ってかまいません
SNS運用ガイドライン(制定日【 年 月 日】/管理者【 】)
第1条 目的と対象
- このガイドラインは、【会社名】が【目的:例 お客様への情報発信と来店のきっかけづくり】のために運用する公式SNSのアカウントについて、守ることを定める
- 対象のアカウントは【サービス名とアカウント名を列挙】とする
- 対象者は、【社員/店舗スタッフ/アルバイト/運用を受ける外部の担当者】のうち、公式アカウントの投稿・返信・管理にかかわる全員とする
第2条 役割
- 投稿は、【作る人】が作り、【確かめる人】が確かめ、【決める人】が決めて、【出す人】が出す。1人が複数の役割を兼ねてよいが、「作る人」と「決める人」は別の人にする
- 承認の段数は【 】段とする。投稿の種類ごとに段数を変える場合は、別紙【 】に定める
- 承認者が不在のときの代わりの人は【 】とする
第3条 投稿してよいもの・いけないもの
- 投稿してよいものは【例 商品・サービスの紹介/営業時間やイベントの案内/スタッフの紹介(本人の許可あり)】とする
- 投稿してはいけないものは、次のとおりとする
- 【お客様や取引先が特定できる情報・写真(本人の許可がある場合を除く)】
- 【公開前の情報・社内の情報】
- 【他社や個人への批判・中傷】
- 【事実を確かめていない数字・効果の断定】
- 【政治・宗教に関する投稿】
- 投稿してよいか判断に迷ったときは、投稿せずに【連絡先】に聞く
第4条 写真・文章・音楽の権利
- 投稿に使う写真・文章・イラスト・音楽は、【自社で撮影・制作したもの/権利者の許可を得たもの/利用規約で商用利用が認められた素材】に限る
- 他者の投稿や記事を紹介するときは、【出典とアカウント名を明記し、相手の許可を得る/引用の範囲にとどめる】
- 人が写っている写真は、【本人(子どもの場合は保護者)の許可を得たもの】に限る
- 許可や素材の利用条件は、【記録先】に残す
第5条 生成AIで作った文章・画像の扱い
- 画像は、【生成AIで作った画像を使わない/加工の素材としてのみ使う/【用途】に限り使う(承認者:【 】)】
- 文章は、【生成AIで作った文章をそのまま投稿しない。必ず担当者が自分の目で内容を確かめ、加筆・修正してから出す/下書きにだけ使う/使わない】
- 他者の作品や写真を生成AIに入力して、似たものを作らせることはしない
- 生成AIを使った場合は、【使った場面と確かめた人を記録する/記録しない】
第6条 コメント・口コミへの返信
- 返信する人は【 】とする
- 返信する前に、【事実関係/お客様の個人情報の有無/苦情の場合は責任者への報告】を確かめる
- 返信の文面は、【担当者が書く/生成AIの下書きを使う場合は、第5条に従い担当者が確かめて直す】
第7条 誤投稿と炎上の初動
- 誤投稿や不適切な投稿に気づいた人は、【 】分以内に【連絡先】へ知らせる
- 気づいた人が自分で削除してよいかは、【よい/よくない(責任者の指示を待つ)】とする
- お客様や報道機関への説明は、【責任者】だけが行う。ほかの人は、問い合わせを【連絡先】に回す
第8条 アカウントとパスワード
- アカウントの管理者は【 】とする
- パスワードは【保管場所】で管理し、【共有しない/共有する場合は管理者が記録する】
- 退職・異動・外部の担当者の契約終了のときは、【 】日以内に権限を外し、パスワードを変更する
第9条 見直し
- このガイドラインは、【半年に1回/年に1回】見直す
- 見直しは、【担当者の交代/アカウントの追加/問題の発生】のときにも行う
- 改訂したときは、改訂日と変更点を【記録先】に残し、対象者に知らせる
承認の段数、投稿の種類ごとの承認ルール、炎上の初動、アカウントの権限管理の考え方は、SNS運用は内製か外注かにまとめています。ひな形では、そこへつなぐ最低限の1行だけを置きました。
第5条の考え方:生成AIの扱いは、会社で決めて書く
第5条は、選択肢の中から会社が選ぶ形にしました。生成AIの扱いは、業種や発信の目的によって答えが変わるためです。
当社の場合は、次のように決めています。
- 画像:生成AIで作った画像は使いません。当社の運用で見えている傾向として、生成AIで作った画像を使った投稿は、リーチが落ちる傾向があるためです。ほかの会社や業種でも同じとは限らず、数字でお見せできる形でもありません。自社のアカウントで確かめたうえで、選択肢を決めてください
- 文章:生成AIで作った文章は、そのまま使いません。必ず担当者が自分の目で内容を確かめ、加筆・修正してから出します
もう1つ、文化庁の考え方に触れておきます。文化庁(文化審議会著作権分科会法制度小委員会)は「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日)で、生成物に既存の著作物との類似性と依拠性が認められれば、著作権侵害として差止めや損害賠償を請求され得るとしています。依拠性が認められる例として、既存の著作物そのものや、その題号などの固有名詞を生成AIに入力して作らせる場合を挙げています。第5条の3は、この考え方を踏まえた条です。また同じ資料は、人が道具としてAIを使うのであり、その行為の責任はAIを道具として用いる人に帰属する、という前提を置いています。生成AIを使った投稿の責任は、投稿した会社と担当者が負うと考えておくのが安全です。
自治体が生成AIの利用ルールを作る場合は、シティプロモーションにAIをどう使うかを参照してください。生成AIで下書きを作り、人が仕上げる実例としては、Instagramの月次レポートをAIで作る手順があります。口コミへの返信の文面は、口コミ返信のAIは下書きまでで扱っています。
5. 店舗スタッフに渡す短い版
店舗のスタッフに渡すのは、本体ではなく、次の3項目だけです。A4の半分に収まる分量にして、投稿する場所の近くに貼れる形で渡します。
【店舗名】SNS投稿のルール
1. 出してよいもの – 【商品・メニュー・イベントの写真と、ひと言の案内】 – 【スタッフの紹介(本人の許可があるもの)】
2. 出してはいけないもの – 【お客様の顔や名前が分かるもの(許可がないもの)】 – 【公開前の情報、他社や個人への批判、事実を確かめていない数字】 – 【生成AIで作った画像/生成AIの文章をそのまま使ったもの】
3. 迷ったら、出さずに聞く – 聞く先:【役職・名前】 連絡方法:【電話/チャット 番号・チャンネル】 – 間違えて出したときは、消す前に【 】分以内に連絡する
2の最後の行は、本体の第5条で選んだ内容に合わせて書き換えます。本体で「使わない」を選んだ会社は、そのまま書けば足ります。条件つきで使う会社は、「使う前に【 】に聞く」にします。
店舗に任せるルールは、これくらい短いほうが機能します。投稿の種類ごとの承認ルールまで店舗に渡すと、投稿が止まります。細かい線引きは、本部の責任者が決める領域です。
6. 守られる文書にする4つの書き方
ここは、当社が運用を受けた経験の整理ではなく、文書の作りから見て「こう書いたほうが守られやすい」と考えているものです。事例で裏づけたものではないので、そのつもりで読んでください。
- 禁止の理由を1行で添える:「お客様の顔を載せない」だけでなく、「許可がない限り」と条件を付けます。理由が分かると、想定外の場面でも判断できます
- 分厚くしない:本体は1枚、店舗版は3項目です。読まれない文書は、ないのと同じです
- 承認者を人名か役職で書く:「責任者が確認する」では、誰のことか分かりません。【 】に具体的な役職を入れます。不在時の代わりの人も書いておきます
- 見直しの日を決める:制定日と、次に見直す日を文書の先頭に書きます。見直す日がない文書は、書き換えられないまま古くなります。アカウントが増えたとき、担当者が替わったときにも見直します
7. 運用代行に出しているときの書き方
SNSの運用を外部に出している場合も、ガイドラインは会社が持ちます。外部の担当者に任せるのは作業で、判断の基準は社内に残します。
ひな形では、次の3か所を確かめてください。
- 第1条の3(対象者):運用を受ける外部の担当者を、対象者に入れます。外部の担当者も、同じ文書を読んで守る前提にします
- 第2条(役割):「決める人」は社内の人にします。運用代行に任せるのは「作る人」「出す人」までが目安です。工程ごとの分け方は、SNS運用は内製か外注かで整理しています
- 第5条・第8条(生成AIとアカウント):外部の担当者が生成AIを使うのか、使うならどの場面かを、契約の前に確かめて、第5条の選択肢に合わせます。契約が終わったときの権限の外し方も、第8条に書いておきます
SNS運用全体の設計は企業SNS運用の正解|目的別の設計フレームにまとめています。
8. よくある質問(FAQ)
Q1: ガイドラインは、何ページあればよいですか? 本体は1枚(A4で1〜2ページ)を目安にしてください。当社が運用を受けた先で作った投稿ルールも、1枚に30項目ほどでした。店舗に渡す版は、3項目で足ります(第1章、第5章)。
Q2: 店舗スタッフの個人アカウントは、どこまで縛れますか? このひな形は、公式アカウントを動かす人のルールで、個人のアカウントでの発信までは縛りません。個人のアカウントで会社や仕事について書くときのルールは、別の文書にします。就業規則との関係は、会社ごとに違うので、法務や社会保険労務士に確認してください(第2章)。
Q3: 生成AIで作った画像は、そう書くべきですか? 表示を求めるかどうかは、会社が決めることです。利用するSNSの規約で表示の扱いが定められている場合もあり、本記事では調べていません。各サービスの最新の規約で確認してください。当社は、そもそも画像に生成AIを使いません。リーチが落ちる傾向が、当社の運用で見えているためです(第4章)。
Q4: 生成AIで文章の下書きを作ってもよいですか? 会社が決めてかまいません。当社は、生成AIで作った文章をそのまま使わず、必ず自分の目で内容を確かめ、加筆・修正してから出しています。第5条の2の選択肢から、自社に合うものを選んでください(第4章)。
Q5: 他人の画像を生成AIに入力して、似た画像を作らせてもよいですか? しないでください。文化庁の「AIと著作権に関する考え方について」は、既存の著作物そのものを入力して生成物を作らせた場合などは、依拠性が認められ、著作権侵害になり得ると整理しています。個別の判断は、法務や弁護士に確認してください(第4章)。
Q6: 運用代行に出していても、ガイドラインは必要ですか? 必要です。判断の基準を社内に残し、外部の担当者にも同じ基準で動いてもらうためです。対象者に外部の担当者を入れ、契約の前に生成AIの扱いも確かめてください(第7章)。
Q7: どのくらいの頻度で見直せばよいですか? 半年に1回か、年に1回を目安にします。加えて、担当者が替わったとき、アカウントを増やしたとき、問題が起きたときにも見直します(第6章)。
9. 次の一歩
ひな形を埋めたあと、運用の体制や、自社で運用するか外に出すかを決める段階では、次の記事が参考になります。
- 体制と承認の段数:SNS運用は内製か外注か
- SNS運用全体の設計:企業SNS運用の正解|目的別の設計フレーム
- 口コミ・コメントへの返信:口コミ返信のAIは下書きまで
SNS運用のご相談は、SNS運用代行からお問い合わせください。
参考文献
- 柳井市「柳井市公式SNS運用ポリシー」(取得日:2026-10-13)https://www.city-yanai.jp/uploaded/attachment/34951.pdf
- 北海道情報大学「SNS公式アカウント運用に関するガイドライン」(取得日:2026-10-13)https://www.do-johodai.ac.jp/_cmswp/wp-content/uploads/guidelines_for_the_operation_of_official_sns_accounts.pdf
- 文化審議会著作権分科会法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日、取得日:2026-10-13)https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/pdf/94037901_01.pdf
- 文化庁「AIと著作権について」(取得日:2026-10-13)https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/aiandcopyright.html
- Meltwater「SNSガイドラインとは?作成の6ステップ」(取得日:2026-10-13)https://www.meltwater.com/jp/blog/sns-guidelines
- お名前.com「SNS運用ガイドラインの必要性とは」(2026年8月6日付、取得日:2026-10-13)https://www.onamae.com/business/article/242850/
※各文書の内容は、掲載日以降に変わることがあります。ひな形は当社の運用経験をもとにした提案で、法的な助言ではありません。自社に適用する前に、必要に応じて法務の担当者や専門家に確認してください。
最終更新日:2026-10-13/初回公開予定 2026-10-14 著者:後藤晃(デジタルプロモーション株式会社 代表取締役社長)。著書『マーケティングで挑む地域創生』(2025年)、シェア出版『「ゼロイチ」の挑戦 Vol.2』第10章寄稿。駅前・街頭のデジタルサイネージ網「タウンビジョン」を全国展開し、サイネージ・SNS・地域メディアを組み合わせた運用代行を専門に手がける。