「デジタルサイネージを入れたい。業者から見積もりを取ったが、高いのか安いのか分からない」。この相談で行き詰まるのは、画面の値段が分からないからではありません。見積書ごとに含まれている範囲が違い、そのままでは並べて比べられないからです。
本記事は、店舗や事業所に1台から数台入れる民間の企業向けです。自治体の調達は自治体・公共施設のデジタルサイネージ運用、運用を社内でやるか外に出すかは内製か外注かをご覧ください。当社の料金は載せず、相場は公開されている第三者の資料から、出典ごとに引きます。
デジタルサイネージの費用は、「初期費用+月額×使う月数」の合計で比べます。 屋内に1台なら、オブライトは初期費用を、画面・再生機器・工事・最初のコンテンツ制作の合計で「20万〜60万円」としています。これとは別に、配信システムの月額が1台あたり月3,000円〜1万円かかります(同社、2026年7月18日付、取得日2026-10-13)。初期費用は画面・再生機器・工事・最初のコンテンツ制作、月額は配信システムの利用料・保守・通信費・電気代です。もう1つ、契約を終えるときや業者を替えるときに、機器・配信システムのアカウント・動画や画像のデータのうち何が手元に残るかも、見積もりの段階で確かめます。1台あたりの値段だけで比べると、この2つが抜け落ちます。
※「再生機器」は、画面に映像を送る小さな箱(STBと呼ばれます)です。「配信システム」は、画面に映す内容をインターネット経由で入れ替える仕組み(CMSと呼ばれます)で、多くは月額制です。以降はこの呼び方で書きます。
1. 結論:比べる軸は「初期費用+月額×使う月数」と「やめるときに残るもの」
含まれる範囲の違いは、費用の差としてはっきり出ます。オブライトは「『サイネージ本体だけ』の価格で予算を立てると、工事とコンテンツ制作で想定の1.5〜2倍になるのが典型的な誤算です」と書いています(2026年7月18日付、取得日2026-10-13)。本体だけの安さに引かれると、工事と最初の映像づくりで予算を超えます。
そこで、次の2つの軸に整理します。
- 総額:初期費用に、月額×使う月数を足します。5年使う前提なら、月額を60か月ぶん積みます。月額が3,000円違うと、5年では18万円の差になります
- やめるときに残るもの:契約が終わったとき、あるいは別の業者に替えたいときに、機器を使い続けられるか、アカウントや動画・画像のデータを引き継げるかです。ここは費用の一覧に出てきません。見積もりの段階でしか確かめられないので、最初に聞きます
2. 費用は5つに分かれる
主な費用は、画面・再生機器・工事・配信システムの利用料・コンテンツの5つです。ほかに毎月、通信費・電気代・保守費を確かめます。次の表は、公開されている2社の相場です。同じ項目でも数字が違うのは、各社が想定している機種や設置条件が違うためです。幅は「安い構成から高い構成まで」と読んでください。
(取得日はいずれも2026-10-13。)
オブライトは、屋内1台を標準的に組んだ場合の初期費用を、画面・再生機器・工事・最初のコンテンツ制作の合計で「20万〜60万円」としています。数字は参考値にとどめ、実際の見積書の行と照らして使ってください。
配信システムの月額相場
配信システムの月額は、出典ごとに次のとおりです。
- iTSCOM for Business:1端末あたり月4,000円〜1万円
- オブライト:1台あたり月3,000円〜1万円
- アイリスオーヤマ:1端末あたり月2,000円〜1万円ほど
課金の単位は1台(1端末)ごとなので、台数が増えるほど月額も増えます。見積書では、この月額に保守や通信が含まれるのか、別に請求されるのかを確かめてください。
月々の通信費・電気代・保守費
配信システムのほかに、毎月次の3つがかかります。
- 通信費:iTSCOMは、クラウド型だとインターネット回線が必須で、光回線の月額基本料の目安は4,000〜6,000円としています。オブライトは月1,000〜5,000円で、店舗の既存Wi-Fiを使えば追加はないとしています
- 電気代:iTSCOMは42型で月2,000円以下、オブライトは55型・1日12時間表示で月1,000〜3,000円です
- 保守:iTSCOMは月3,000〜5,000円、オブライトは月3,000〜1万円で、「故障時の交換・リモート監視を含むか」で幅が出るとしています
再生機器が要らない構成もあります。iTSCOMは「ディスプレイの仕様によってはSTBなしで運用できる」としています。USBメモリで入れ替える方式なら配信システムの月額も要りませんが、オブライトが書くとおり、更新の手間は増えます。映像を何度差し替える運用になるかで、どれを選ぶかが変わります。差し替えの手間を減らす設計はサイネージのコンテンツ設計にまとめています。
3. 見積書で確かめる5つの項目
見積書を受け取ったら、次の5つの項目を確かめます。数字より先に「何が入っているか」を見ます。
「一式」と書かれた行があれば、画面・再生機器・工事・最初のコンテンツ制作・配信システム・保守に分けた内訳を依頼し、含まれる範囲を文書で確認します。オブライトは、見積もり比較では画面・再生機器・工事・最初のコンテンツ制作の4要素がそろっているかを最初に確認するよう勧め、配線延長や分電盤工事が工事費を押し上げるとしています。リコーのページでは、再生機器の保証期間は1年間で、現地での保守は有償のオプションと書かれています。当社は、見積もりを出すときに、施工費を含めて項目を詳細に分け、「一式」にまとめません。依頼する側が、他社の見積書と並べて比べやすいと考えるためです。
実際に、相談に来られた方が持参した他社の見積書で、分からなかったのは施工費でした。「一式」としか書かれておらず、中身がまったく分からなかったのです。施工費は、電源・配線の工事、壁掛けやスタンドの設置、インターネット回線の用意を誰がするかに分けてもらうと、他社の見積書と並べられます。
相見積もりを頼むときは、次の条件をそろえます。条件が同じなら、返ってきた見積書の項目を並べて比べられます。
- 台数
- 屋内か屋外か
- 画面の大きさ
- 設置の仕方(壁掛け、スタンドなど)
- 使う年数
- 更新を誰がやるか
何社から取るかより、条件をそろえることのほうが比較の精度を左右します。
4. 5年で比べる:購入・リース・月額サービスの総額
合計は次の式で出します。
5年間の合計 = 初期費用 + 月額 × 使う月数(5年なら60か月) + 期間中に追加で出るお金(故障の交換、移設、撤去など)
具体的な数字で見てみます。次の表は、説明のための仮の数字です。当社の料金でも、どこかの会社の相場でもありません。屋内に1台、5年使う想定で、購入・リース・機器込みの月額サービス(レンタルを含む)を比べます。
表の合計は、通信費・電気代を3つとも同額として外しています。故障の交換・移設・撤去などの追加費用も含めていません。この仮の数字では、5年使い切るなら3つの合計は90万〜99万円で、差は9万円です。差が大きく開くのは、途中でやめたり替えたりするときです。リースは、3年でやめても残り24か月ぶんのリース料が出ていきます。月額サービスの表の数字は、最低利用期間がなく、終了時の追加支払いもない想定です。最低利用期間が残っている契約なら、その残りの月額を払う必要があるかを確かめてください。購入は、3年でやめても機器が手元に残ります。
台数によって、見方を変えます。
- 1〜2台:1〜2台でも、同じ期間と範囲で比べます。ただし、差が開くのは途中でやめるときです。確かめるのは、前の章の5つの項目と、次の章の「やめるときに残るもの」です
- 複数台・多拠点:オブライトは、画面・工事・配信システムとも台数割引が効きやすいとしています。一方、リースで入れた台数は、期間中に減らせないものとして数えてください(次の章で触れる、リースの解約不能の性質のためです)
5. やめるとき、替えるときに手元に残るもの
ここが、相場の一覧には出てこない部分です。契約の形ごとに、手元に何が残るかを見ていきます。
機器は返すのか、残るのか
購入なら、画面も再生機器も自社のものです。リースは事情が違います。公益社団法人リース事業協会は、ファイナンス・リースについて「基本的にリース期間中の解約(中途解約)は禁止され、中途解約をする場合には、残期間のリース料またはそれに相当する違約金を一括で支払うよう、契約で定められています」と説明しています(取得日2026-10-13)。同じ表には、リースでは「ユーザーが物件の修繕義務を負い、サプライヤーとの間で保守契約を締結する」とも書かれています。保守の契約と費用は、借りる側が別に手当てする前提です。
レンタル(賃貸借)については、同じ表に「一般的に、賃借人は解約権を有する。ただし、土地、建物、その他比較的期間の長い契約のときには、解約できない期間(契約日から所定の期間)、解約予告期間…を定める場合がある」とあります。月額サービスを選ぶときは、解約できない期間と予告の期限が契約書にどう書かれているかを読みます。
再生機器は、配信システムを替えても使えるのか
配信システムは、替えたくなる場面が出てきます。値上げ、サービス終了、機能不足などです。このとき、今の再生機器をそのまま使えるかどうかは、配信システムごとに違います。
公開されている資料でも、方式は分かれています。リコーのデジタルサイネージは、導入に必要なものの欄に「専用STB」を挙げ、「配信を受けるのに必要なコントローラー」と書いています。クラウドの使用料も「1STBあたり」の契約です(取得日2026-10-13)。一方、サムライソードは、配信システムのアプリを「お客様が現在ご利用されているSTBやOS内蔵モニターにインストールすることも可能」とし、そのうえで「全ての機器で動作するわけではありません」と断っています(取得日2026-10-13)。
専用の機器が要る方式と、既存の機器にアプリを入れる方式があります。配信システムを替えたときに今の機器を使い続けられるかは、組み合わせによります。見積もりの段階で、次の3点を確かめてください。
- この再生機器は、他社の配信システムでも使えますか
- 配信システムをやめた場合、機器は使い続けられますか
- 機器の保守は、配信システムの契約と切り離せますか
なお、配信システムを替えると機器も替えることになるかを直接書いた公開ページは、当社が2026年10月13日に調べた範囲では見つかりませんでした。
配信システムのアカウントと、動画・画像のデータ
自治体の調達を扱った記事で、当社は「CMSのアカウントも、素材の元データも、更新の段取りも、契約書に書いていなければ移りません」と書きました。これは自治体に限った話ではありません。民間の契約でも同じで、契約書に書いていなければ、業者を替えた時点で、積み上げた素材と設定が手元に残らないことがあります。
契約書や見積書の備考に、次の項目があるかを確かめます。これは当社の考え方で、契約の標準ではありません。
- 配信システムの管理画面のアカウントが、自社の名義か、業者の名義か
- 契約が終わるとき、配信用の動画・画像ファイルを受け取れるか。形式と追加費用はどうなるか
- 修正に使う編集データ(元の制作データ)を受け取れるか。形式と追加費用はどうなるか
- 機器は、返却か買い取りか。買い取れるなら条件は何か
- 最低利用期間と、途中でやめる場合の条件(残りの月額を払うのか、違約金か)
- 解約を申し出る期限は、何か月前か
見積もりの段階で、各条件と追加費用の有無を確かめ、書面に残してもらいます。契約後に頼むと、交渉になります。
当社はマルチベンダーで、特定の配信システムに縛られない立場です。そのため、配信システムや業者を替えたいという相談も受けています。ただし、機器や動画・画像のデータを引き継げるかどうかは、機器の組み合わせ、データの形式、契約の条件で変わります。ここまでの項目は、相談先を替えるときも確かめてください。
6. 費用の回収を考えるときの次の一歩
費用の見方が固まったら、次に考えるのは、その費用に見合う成果が出るかどうかです。論点ごとに、読む記事が分かれます。
- 効果をどう測るか:サイネージ効果測定の設計。費用対効果は、掲出面の条件をそろえた比較から始めます
- 広告で費用を賄えるか:デジタルサイネージで広告収入を得るには。画面を人に貸して収入を得る側の収支です。出ていくお金は本記事、入ってくるお金はこちらで整理しています
- 運用を誰がやるか:デジタルサイネージ運用は内製か外注か。運用代行の費用の相場もこちらにあります。本記事では再掲しません
- 更新の手間を減らす:サイネージのコンテンツ設計
- 全体の設計:店舗売上を伸ばすデジタルサイネージ運用
- 自治体・公共施設の調達:自治体・公共施設のデジタルサイネージ運用
サイネージの導入や運用についてのご相談は、サイネージ運用代行からお問い合わせください。
よくある質問(FAQ)
Q1: 屋内に1台置くと、初期費用はいくらですか? オブライトは、屋内の標準的な構成で20万〜60万円としています。画面・再生機器・工事・最初のコンテンツ制作の合計で、壁掛けの場合です。画面が大きい場合や屋外では上がります。iTSCOMの相場では、屋外用の画面だけで50万〜300万円です。通信費や月々の配信システム利用料は含みません(第2章)。
Q2: 配信システムの月額はいくらですか? 1台(1端末)あたり、iTSCOMは月4,000円〜1万円、オブライトは月3,000円〜1万円、アイリスオーヤマは月2,000円〜1万円ほどです。台数が増えれば月額も増えます。保守や通信が月額に含まれるかは、見積書で確かめてください(第2章)。
Q3: 1台だけでも、配信システムは要りますか? 必須ではありません。USBメモリなどで映像を入れ替える方式なら、配信システムの月額は要りません。ただし、オブライトが書くとおり、更新の手間が増えます。映像を入れ替える頻度が低ければ、この方式で足ります(第2章)。
Q4: 家庭用のテレビで代用できますか? 営業時間内だけの表示なら、代用できる場合があります。オブライトは、民生用のテレビと再生機器の組み合わせで本体費用を抑えられるとする一方、長時間の連続表示では焼き付きや故障のリスクが高く、縦置きに対応しなかったり保証の対象外になったりする場合があるとしています。1日12時間を超える表示や屋外では、業務用を勧めています。
Q5: リースとレンタルは、どちらが安いですか? 同じ期間で、初期費用・月額・保守・やめるときの費用を足して比べます。月額だけでは決まりません(第4章)。違いが出るのは、途中でやめたときです。ファイナンス・リースは中途解約が基本的にできず、残りのリース料を払います。レンタルは一般に借りる側に解約権がありますが、期間の長い契約では解約できない期間を定めることがあります(リース事業協会、第5章)。
Q6: 補助金は使えますか? 対象になる例があります。オブライトは、小規模事業者持続化補助金(販促物として)や、自治体の商店街活性化・DX関連の補助金を挙げています。公募の時期と要件は変わるため、導入前に商工会議所や自治体の窓口で最新の状況を確認してください。
Q7: 見積もりは、何社から取ればよいですか? 社数より、条件をそろえることを優先してください。台数・屋内か屋外か・画面の大きさ・設置の仕方・使う年数・更新を誰がやるかを同じにして依頼すると、項目を並べて比べられます(第3章)。
Q8: 見積書に「一式」としか書かれていません。どうすればよいですか? 画面・再生機器・工事・最初のコンテンツ制作・配信システム・保守に分けた内訳を依頼してください。施工費も同じで、電源・配線の工事、壁掛けやスタンドの設置、回線の用意を誰がするかに分けてもらいます。内訳を出せない場合は、含まれる範囲を文書で確認します。当社は施工費を含め、項目を分けて見積もりを出しています(第3章)。
Q9: 契約の途中で、業者や配信システムを替えられますか? 契約の形と、書かれている条件で決まります。リースなら残りのリース料、月額サービスなら最低利用期間と解約の予告期限を確認してください。機器やアカウント、動画・画像のファイルや編集データを引き継げるかは、契約書に書かれていなければ、替えた時点で手元に残らないことがあります(第5章)。
参考文献
- 公益社団法人リース事業協会「リース契約の特徴」(取得日:2026-10-13)https://www.leasing.or.jp/information/finance.html
- iTSCOM for Business「デジタルサイネージの価格はどのくらい?相場や選び方を詳しく紹介」(2025年10月1日付、取得日:2026-10-13)https://www.itscom.co.jp/forbiz/column/signage/182/
- オブライト「デジタルサイネージの設置費用・導入費用 — 相場と内訳【2026年版】」(2026年7月18日付、取得日:2026-10-13)https://www.oflight.co.jp/ja/columns/digital-signage-installation-cost-2026
- アイリスオーヤマ「デジタルサイネージにかかる費用」(取得日:2026-10-13)https://www.irisohyama.co.jp/b2b/itrends/articles/5843/
- リコー「リコーデジタルサイネージ ラインアップ」(取得日:2026-10-13)https://www.ricoh.co.jp/products/list/ricoh-digital-signage/lineup
- 株式会社サムライソード「デジタルサイネージ高機能CMS」プレスリリース(PR TIMES、取得日:2026-10-13)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000063.000027316.html
※各社の相場や仕様は、掲載日以降に変わることがあります。見積もりの際は、最新の内容を各社にご確認ください。
最終更新日:2026-10-13/初回公開予定 2026-10-15 著者:後藤晃(デジタルプロモーション株式会社 代表取締役社長)。著書『マーケティングで挑む地域創生』(2025年)、シェア出版『「ゼロイチ」の挑戦 Vol.2』第10章寄稿。駅前・街頭のデジタルサイネージ網「タウンビジョン」を全国展開し、サイネージ・SNS・地域メディアを組み合わせた運用代行を専門に手がける。