「店長から、うちの店のインスタを作りたいと言われた」。店舗を複数持つ会社の社長やマーケティング責任者から、よく出る相談です。やる気のある店長の申し出を断る理由は見つけにくく、かといって許可すると、アカウントが増えてから運用に困ります。
多店舗のInstagramで店舗ごとにアカウントを作るかは、「店ごとに投稿する話題が継続して出るか」と「撮って投稿する人がいるか」で決めます。 店ごとにこの2つを確かめ、両方そろう店だけが店舗アカウントの候補です。それ以外の店の話題は、本部のアカウントで扱えば足ります。作る場合は、アカウントの持ち主を店長個人ではなく会社に置き、ログインの手段と引き継ぎ、やめるときの手順を、作る前に決めておきます。
デジタルプロモーション株式会社(以下、当社)は、店舗やエリアを対象にしたSNS運用の設計と運用代行を手がけています。本記事は、当社の運用経験にもとづく提案で、特定のお客さまの事例や数字は載せていません。判断の型と手順として、店舗を複数持つ会社の社長・マーケティング責任者に向けて書いています。
1. 3つの型:本部1つ/本部+全店舗/本部+一部の店舗
アカウントの持ち方は、大きく3つに分かれます。
- 本部1つ:ブランドの公式アカウントだけを持つ。各店の話題は、本部のアカウントの中で扱う
- 本部+全店舗:本部のアカウントに加え、すべての店が自分のアカウントを持つ
- 本部+一部の店舗:本部のアカウントに加え、旗艦店や、地域に特徴のある店だけが自分のアカウントを持つ
「全店舗に作る」が出発点になりやすいのは、店長からの申し出が店ごとに届くからです。ただ、3つの型を並べて選べば、「作るか、作らないか」の二択ではなくなります。当社の見立てでは、3の「一部の店舗」から始める形が、手を広げすぎずに済みます。作る店を限れば、運用に手が回るかどうかを確かめながら増やせます。
なお、アカウントを作ったあとの工程の分担(企画・撮影・コメント対応を本部と店舗でどう分けるか)は、SNS運用は内製か外注か|工程分解と承認フローで決める体制設計で扱っています。本記事は、その手前の「アカウントを何個持つか、だれが持つか」に絞ります。
2. 本部1つで足りる条件、店舗ごとに作ったほうがよい条件
判断の軸は、アカウントを分けることで得るものがあるか、です。分ければ、店ごとの個性を出せます。一方で、アカウントごとにフォロワーを増やし、投稿と管理を続ける手間が要ります。
この表の目安(たとえば「週1本」)は、当社の運用でも効いている目安です。法令や、Instagramの仕様が定めた基準ではありません。会社の人員や業態によって、線は動きます。
見落とされがちなのは、「撮る人がいるか」です。店長がやる気になっていても、実際に撮って投稿するのが店長1人なら、その人が異動や休職をした時点で更新が止まります。更新が止まったアカウントが残ると、検索で見つけた客に「この店は今やっているのか」と不安を与えます。投稿が止まったアカウントを作らないことも、判断の一部です。
また、アカウントを分けるかは、運用の成果をどう見るかとも結び付いています。店ごとにアカウントを分けると、数字も店ごとに分かれます。何を見るかは、SNS運用のKPI設定|フォロワー数を捨て、目的別KPIツリーで設計するで整理しています。
3. 既にある店舗アカウントの棚卸しから始める
ここまでは、これから作る前提で書きました。ただ、複数の店を持つ会社では、本部が把握していないところで、店長や店のスタッフが既にアカウントを作っていることがあります。判断の前に、まず棚卸しをします。
洗い出す項目は、次の6つです。
特に確かめたいのは、ログインの手段と二段階認証の届き先です。作った人の個人のメールアドレスや電話番号で登録されていると、その人が異動や退職をしたときに、会社の側からログインできなくなるおそれがあります。これは起きうるリスクとして挙げています。当社が入る案件では、アカウントの持ち主とログインの管理を、最初に整理するようにしています。
棚卸しの結果は、次の3つに分けて考えます。
- 残す:投稿が続いていて、持ち主を会社に移せる
- まとめる:投稿が止まっている、または本部のアカウントで足りる
- 閉じる:ルールに反している、または運用を続ける人がいない。持ち主に連絡がつかないときは、会社から管理・操作できるかをまず確かめる
「まとめる」と「閉じる」の進め方は第7章で書きます。
4. 持ち主を会社に置く:ログイン、権限、引き継ぎ
店舗アカウントを作る、または残すと決めたら、持ち主を会社に置きます。ここで決めるのは、次の3つです。
- ログインに使うメールアドレスと電話番号を、会社が管理するものにする:個人のものではなく、部署や店舗の共用のメールアドレスを使うと、担当者が替わってもログインを失いにくくなります。これは当社の運用上の提案で、Instagramの仕様が求めているわけではありません
- 二段階認証のコードの届き先を、複数人が受けられる形にする:特定の1人の端末だけに届く形は避けます
- 担当者が替わるときの引き継ぎ手順を、先に決める:パスワードの変更、認証の届き先の変更、権限の付け替えを、だれがいつ行うか
当社が入る案件でも、この3つを最初に整えます。そのうえで、Metaのビジネス向けの管理の仕組みで、アカウントを会社の管理下に置く方法があります。MetaのビジネスヘルプセンターがInstagramアカウントについて案内している内容(2026年10月24日に確認)は、次のとおりです。
- ビジネスポートフォリオにInstagramのプロアカウントを追加するには、ビジネスポートフォリオの全権限が必要です
- Instagramアカウントは、1つのビジネスポートフォリオにしか追加できません。すでに別のポートフォリオにリンクされているときは、アクセス権を付与してもらうか、そちらから削除してから追加します
- 追加は、Meta Business Suiteでビジネスポートフォリオの[設定]を開き、[アカウント]の[Instagramアカウント]から[追加]を選んで進めます。Instagramのユーザーネームとパスワードでログインし、二段階認証を使っていれば、セキュリティコードを入力します
- 追加した後は、[ユーザー]から人を招待して、ビジネスアセット(Instagramアカウントなど)とアクセス許可を割り当てます。ユーザーを追加できるのは、ビジネスポートフォリオの全権限を持つ人です。業務上必要な範囲のアクセス許可だけを割り当てることが勧められています
画面の名前や手順は、Meta側の更新で変わることがあります。実際に操作するときは、その時点のヘルプを確認してください。
この仕組みを使う利点は、アカウントを使う「人」と、アカウントを持つ「会社」を分けられることです。担当の店長に必要な範囲の権限だけを割り当て、異動や退職の際は、権限を外せば済みます。ただし、追加の際にアカウントのユーザーネームとパスワードが要る点は押さえてください。あわせて、ビジネスポートフォリオの全権限を持つ人は、最低2人置いてください。1人だけだと、その人が辞めたときに、同じ問題が繰り返されます。これは当社の提案です。
外部の運用会社に任せる場合も、同じです。ビジネスポートフォリオの全権限は自社が持ち、外部には必要な権限だけを割り当てます。権限の渡し方の基本は、SNS運用は内製か外注かの「権限とアカウント管理」に書きました。
アカウントの一覧表も作ります。Googleのビジネスプロフィールで、複数の拠点の持ち主を一覧表で管理する考え方は、ディーラーのMEO対策は「部門を分けるか」からの第6章にまとめました。Instagramでも、同じ型が使えます。
5. 検索・地図での見え方:スポットページと店舗アカウント
検索や地図から店を探す人は、各店のスポットのページに入ってきます。当社はこの面を「待つ面」と呼んでいます。整え方は、Instagramで地元客に届かせる設計で扱いました。そこで挙げた確認点のひとつが、自店のスポットのページに、自社の公式アカウントが表示されるかです。
多店舗の場合、この確認は店ごとに必要です。店舗アカウントを作れば、スポットのページと店のアカウントを店ごとに結び付けることを検討できます。本部1つの場合は、各店のスポットのページに表示されるのが本部のアカウントになるのか、確認したうえで進めます。どう見えるかは、画面で確かめるのが確実です。
ここでの注意は、「店舗アカウントを作れば、待つ面が自動で整う」わけではない点です。スポットが重複していないか、営業時間やリンクがそろっているかは、アカウントの数と別に、店ごとに点検が要ります。
6. 店舗に任せる範囲と、本部が持つ範囲
店舗アカウントを作る場合も、すべてを店舗に任せる必要はありません。当社が勧めるのは、次の分け方です。
- 本部が持つ:アカウントの持ち主(第4章)、ガイドライン、問題が起きたときの判断、数字の見方
- 店舗に任せる:撮影、店の様子の投稿、コメントへの返信
工程ごとの細かい分担は、SNS運用は内製か外注かに書きました。店舗に渡すルールは、短いものが機能します。本体の文面と、店舗スタッフに渡す3項目の版は、SNS運用ガイドラインのひな形に載せています。
本記事で付け加えるのは、店舗アカウントを作るときの条件を、本部が決めておくことです。たとえば、次のような項目です。
- 作る前に、本部へ申請する
- 申請のとき、第2章の表(話題、撮る人、投稿の頻度)を埋める
- ログインに使うメールアドレスは、本部が決めたものを使う
- 3か月、投稿がなければ、本部と店舗で、続けるか閉じるかを話し合う
最後の項目の「3か月」は一例です。業態によって、適切な期間は変わります。
7. 閉じる・まとめるとき:フォロワーを移せる前提にしない
アカウントを閉じる、または本部のアカウントにまとめる場合は、フォロワーをそのまま新しいアカウントへ引き継げる前提で計画しないことを勧めます。当社が確認した範囲では、Instagramの公式ヘルプに、2つのアカウントを1つに統合する手順は見つかりませんでした。そのため、統合できるかどうかは断定せず、移行先を案内する計画で進めることを勧めます。実際に進める前に、Instagramのヘルプで最新の情報を確認してください。
進め方は、次のとおりです。
- まとめる先を決める:本部のアカウントか、近隣の店のアカウントか
- 移行期間を決める:いきなり閉じず、告知する期間を置く
- 告知する:閉じるアカウントの投稿やプロフィールで、移行先を知らせる
- 案内先を更新する:ウェブサイト、Googleのビジネスプロフィール、店頭のQRコード、チラシのリンク先を、新しいアカウントに差し替える
- 閉じる:移行期間が過ぎてから閉じる。閉じる前に、残したい写真や投稿を保存しておく
4番は忘れやすい作業です。アカウントを閉じても、それを案内していたリンクやQRコードが残っていると、客は存在しないアカウントにたどり着きます。第4章の一覧表に、「どこからこのアカウントへ案内しているか」の列を足しておくと、閉じるときに抜けを防げます。
8. 当社の運用経験からの提案
ここまでの内容は、当社が店舗やエリアのSNS運用を設計してきた経験から、判断の型と手順としてまとめたものです。お客さまの社名や、店舗数・日付・フォロワー数などの数字は載せていません。
当社の運用では、店舗ごとにアカウントを持つ形も、本部1つにまとめる形も扱ってきました。両者を分けた決め手は、アカウントの数や店の規模より、本部が登録の手間と店舗別の分析を引き受ける意思と体制を持てるかでした。店舗ごとに作るなら、アカウントの登録や設定、店ごとの数字の見方まで、本部が持つ前提になります。その前提を置けないときは、本部1つにまとめるほうが、運用が止まりにくくなります。
アカウントを閉じて、新しいアカウントへ移した例もあります。移行の告知は、特別な仕組みを使わず、通常の投稿として数回に分けて出しました。第7章の手順は、この経験を踏まえています。
当社の考え方を一言で書くと、「作る数」より先に「持ち主」を決める、です。アカウントの数は、あとから増やすことも減らすこともできます。しかし、持ち主が決まっていないアカウントは、ログインできなくなった時点で、数を調整する手段そのものを失います。
もうひとつは、「作らない」を選択肢として残すことです。店長の意欲は貴重です。ただ、その意欲は、本部のアカウントの中で、店ごとの投稿として生かすこともできます。本部のアカウントに店舗の担当者が写真を送る、店ごとの投稿の回を設ける、といった形です。
9. よくある質問(FAQ)
Q1: 店長が個人で作ってしまったアカウントは、どうすればよいですか? まず第3章の棚卸しで、ログインの手段と二段階認証の届き先を確認します。会社の管理下に置けるなら残し、第4章の手順で持ち主を移します。移せない、または本部のアカウントで足りるなら、第7章の手順でまとめます。
Q2: アカウント名は、どう付ければよいですか? 当社の提案は、ブランド名と店名(または地名)を入れることです。客が検索するときの言葉に合わせます。ブランド名の表記は、全店でそろえてください。
Q3: 休眠しているアカウントは、消したほうがよいですか? 投稿が止まったまま残すと、客に「この店は今やっているのか」と不安を与えます。続ける見込みがなければ、第7章の手順で閉じます。続ける場合は、持ち主を会社に移してからにしてください。
Q4: Googleのビジネスプロフィールと同じ単位にそろえるべきですか? そろえる必要はありません。Googleのビジネスプロフィールは、店舗の所在地を単位にします。Instagramは、運用する人と話題の有無で決めます。ただ、持ち主を一覧表で管理する考え方は共通です(ディーラーのMEO対策は「部門を分けるか」から)。
Q5: 店舗アカウントを作ると、フォロワーはどうなりますか? 本部のアカウントのフォロワーが、自動で店舗アカウントにも付くわけではありません。店舗アカウントごとにフォロワーを増やす必要があり、運用の負担も増えます。その負担に見合う利点があるか、第2章の判断表で確かめてください。
10. 次の一歩
まずは、次の3つから始めてください。
- 既にある店舗アカウントを洗い出し、ログインの手段と持ち主を確認する(第3章)
- 新しく作りたい店からの申し出に備えて、申請の項目を決める(第6章)
- Metaのビジネスポートフォリオで、全権限を持つ人が2人以上いるかを確認する(第4章)
店舗のSNS運用の設計や、本部と店舗の分担づくりは、当社のSNS運用のサービスからご相談ください。SNS運用の全体像は、企業SNS運用の正解|目的別の設計フレームで整理しています。
参考文献
- Meta ビジネスヘルプセンター「ビジネスポートフォリオにInstagramアカウントを追加する方法」(取得日:2026-10-24)https://ja-jp.facebook.com/business/help/620548115562686
- Meta ビジネスヘルプセンター「ビジネスポートフォリオにユーザーを追加してビジネスアセットを割り当てる」(取得日:2026-10-24)https://www.facebook.com/business/help/2169003770027706
- 自社の運用経験にもとづく提案(2026年10月時点。特定のお客さまの事例は含みません)
※本記事は当社の運用経験からの提案です。画面名や手順は、MetaやInstagramの更新で変わることがあります。実際の操作は、その時点のヘルプで確認してください。
最終更新日:2026-10-24/初回公開予定 2026-10-27 著者:後藤晃(デジタルプロモーション株式会社 代表取締役社長)。著書『マーケティングで挑む地域創生』(2025年)、シェア出版『「ゼロイチ」の挑戦 Vol.2』第10章寄稿。駅前・街頭のデジタルサイネージ網「タウンビジョン」を全国展開し、サイネージ・SNS・地域メディアを組み合わせた運用代行を専門に手がける。