自治体の生成AIは、どの業務から始めるか|住民に出る業務と庁内で閉じる業務で、確認の重さを変える

誤りが届く先で確認が重くなる3段の階段図。庁内で閉じる、職員が確認して出す、住民に直接出る
                                                   

自治体の生成AIは、業務を「誤りがだれに届くか」で3段に分けると、始める順番と確認の重さが決まります。総務省のガイドブックと事例から、庁内で閉じる業務、職員が確認して出す業務、住民に直接出す業務の線の引き方を整理しました。


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「生成AIは入れたが、使われていない」「来年度、何を載せるか決めたい」。市町村のDX・企画・広報の担当課長から、こうした声を聞くことがあります。

自治体の生成AIは、業務を「誤りがだれに届くか」で3段に分けると、始める順番と確認の重さが決まります。 誤りが庁内で止まる業務は、使う職員本人の確認で足ります。住民に出る前に職員が見る業務は、作る人と確認する人を分けます。住民に直接出る業務は、確認の手順に加えて、AIに何を作らせるかまで先に絞ります。始めるのは庁内で閉じる業務からです。ただし住民に出す業務は、確認の手順を先に決めておきます。

デジタルプロモーション株式会社(以下、当社)は、自治体のシティプロモーションや観光、サイネージの支援に関わっています。本記事は、当社が自社の業務で生成AIを運用して気づいた「確認の線の引き方」を、総務省のガイドブックと公開されている自治体の事例に当てはめた提案です。個別の自治体の事例や数字は載せていません。来年度の予算に載せる業務を選ぶ課長の方に向けて書いています。

1. 自治体の導入状況は、国の統計を1行だけ見ておく

総務省の調査(令和7年10月31日時点)では、生成AIの導入済みの団体は、都道府県と指定都市で100%、その他の市区町村で45.6%でした。実証中、導入予定、導入検討中まで含めると約88%が、導入に向けて動いています。出所は総務省「自治体における生成AI導入状況(令和7年度)」です。

この数字の読み方と、民間を含めた全体の進め方は、地方企業と自治体のAI活用に書きました。本記事は、その先の「導入したあと、どの業務に載せるか」を扱います。

同じ調査で、活用事例として回答が多かったのは「あいさつ文案の作成」1,292件、「議事録の要約」1,131件、「議会の想定問答の文案の作成」1,085件です(複数回答、導入済み・実証中・導入予定の団体が対象)。一方で、「住民等からの質問に対する回答案の作成」は848件、「翻訳」は669件と、住民に近い用途も挙がっています。

2. 業務は「何ができるか」ではなく「誤りがだれに届くか」で並べる

生成AIの活用事例は、業務の種類で並べた一覧が多く出回っています。窓口、広報、福祉、観光と分けるやり方です。ただ、一覧を眺めても、自分の課で何から始めるかは決まりません。

当社は、業務を「AIの出力が間違っていたとき、その誤りがだれに届くか」で3段に分けることを勧めます。総務省のガイドブック(第4版)は、次のように用途に応じた正確性と人による確認を求めています。「誤りがだれに届くか」という3段の分け方は、この記述を踏まえた当社の整理です。

生成AIの利用目的に応じて求められる正確性の水準が異なることを意識し、生成物を人が確認するルールを設けることが重要です。 ── 総務省「自治体におけるAI活用・導入ガイドブック<導入手順編>(第4版)」4.1

正確性の水準が用途で変わるなら、確認の重さも用途で変えるのが自然です。当社の3段は、次のとおりです。

段 誤りが届く先 業務の例 確認の重さ
第1段:庁内で閉じる 使った職員本人と、同じ課の職員 議事録の要約、答弁案・事業概要の下書き、ワークショップ結果の整理 使う職員本人が原資料と照らして直す。答弁や公表に使う段階で、第2段の確認に移す
第2段:職員が確認して住民に出す 住民(職員の確認を通ったあと) 広報紙・告知の原稿、問い合わせへの回答案、翻訳 作る人と確認する人を分ける。誤りの可能性を示して出す場合は、その旨を決めておく
第3段:住民に直接出る 住民(職員の確認なしで、その場で) 窓口の案内、チャットボット、観光ルートの提案 出す前に、AIが作る範囲・誤りの表示・人に聞く手段・見直しの手順を決める

[解釈] この線引きは、総務省の資料にある区分ではなく、当社が事例を読んで整理した枠組みです。すべての用途に一律の確認手順を置く、という考え方もあります。ただ、職員の手元で使う下書きにまで承認を重ねると、使う側の負担が増えます。逆に、住民に直接届く用途を下書きと同じ軽さで出すと、誤りがそのまま住民に届きます。そこで当社は、出力の使い道ごとに、確認者と確認項目を変えることを勧めます。

3. 第1段:庁内で閉じる業務は、入力のルールを先に決めて、すぐ始める

誤りが庁内で止まる業務は、最初に載せやすい領域です。ガイドブックの業務例の表から、第1段に当たる事例を3つ拾います。

  • 当別町(北海道):従来型AIによる文字起こしツールに、生成AIによる要約を組み合わせて、議事概要を作成しています
  • 山陽小野田市(山口県):議会の会議録、例規集、市の広報を参照させ、答弁案や企画部門における事業概要の作成など、幅広い領域の文書生成に生成AIを使っています
  • 西粟倉村(岡山県):総合計画に向けたワークショップで、住民の意見を付箋に集めます。付箋をAI-OCRで文字データにし、生成AIで分野別の傾向や強み・弱みを整理して、議論のたたき台に使っています

西粟倉村の事例は、ガイドブックに詳しく載っています。以前は付箋の情報を報告書にまとめるのに半日かかっていたのが、1時間程度に短縮されたとのことです。注目したいのは、使い方のルールです。マニュアルで、個人情報など機密性の高い情報の生成AIへの入力を禁止し、生成物は職員が内容を確認・修正するルールにしています。

出力が庁内で止まる業務でも、決めておくことがあります。入力する情報の線です。誤りが届く先が庁内でも、入れた情報が外に出ることは別の問題です。ガイドブックは、個人情報を含むデータを扱う際に、次の点を確かめるよう挙げています。

  • 利用規定の整備など、組織全体でセキュリティ対策が講じられているか
  • 入力したデータが生成AIの学習データにならない仕様か
  • 生成AIへの入力それ自体で、特定の個人が識別されるか
  • 利用目的のための必要最小限の利用にとどまっているか

個人情報を一律に禁止する、という選択肢だけではありません。大阪市は、庁内の情報ネットワークと閉域接続した市独自の環境を整え、入力したデータが学習されない仕様にしたうえで、一連の処理で1,000人分までなら個人情報の入力を運用上認めています。特定個人情報(マイナンバーを含む情報)は対象外です。少数の個人情報が含まれる議事録の要約や、相談記録表の作成にも使えるようになったそうです。千葉県の福祉相談業務システムは、人名・地名を自動でマスキングし、相談員が適切かを確かめてから生成AIに入力します。

入力のルールは、第1段の業務ごとに決めるより、庁内で1つ決めたほうが回ります。庁内のルールの考え方は、生成AIの社内ルールに書きました。自治体の場合は、総務省が示したガイドライン(ひな形)が出発点になります(第7章)。

4. 第2段:職員が確認して出す業務は、作る人と確認する人を分ける

広報紙の原稿、イベントの告知、住民からの問い合わせへの回答案、外国語の案内。これらは、職員の確認を通ったあとで、住民に届きます。確認が形だけになると、第1段と同じ軽さで、誤りが住民に出ます。

第2段で決めることは、次の4つです。

  1. 確認者を、作成者と別にする。 AIに下書きをさせた職員が、そのまま自分で通す形だと、確認が形だけになります。同じ課でも、確認する職員を分けます。作った人だけでは見落としやすい誤りを、別の目で確かめるためです
  2. 確認する人の思い込みを、先に手当てする。 確認の工程を置いても、確認する人が「AIの出力は全部正しい」と思っていると、素通りになります。当社が経験するなかで、確認で一番起きやすい落とし穴はここです。AIの文章は整って読めるため、なおさらです。確認する人には、AIは間違えるものとして読む、と最初に伝えます
  3. 確認する項目を決める。 事実関係、固有名詞と数字、権利、個人情報。AIが作った文章は読みやすく整うため、誤りが読み流されやすくなります。何を見るかを書き出しておきます
  4. 誤りが残るのを前提にする業務は、そう示して出す。 総務省のガイドブックは、翻訳などの用途について、次のように書いています。

生命・安全に関する機微情報でない限り、生成AIを利用した翻訳・検索・取りまとめ等に用いる場合においては、誤りが含まれる可能性があることを明示した上で、生成AIによる出力結果を表示することも考えられます。 ── 同上 4.1

外国人向けの案内の翻訳なら、作成しないよりも、生成AIの出力であることと誤りが含まれる可能性を明示して公開するほうが、住民の利便性が高まると考えられる、とも書いています。公開後に誤りが分かったときは、柔軟に修正する姿勢が求められる、という但し書きもあります。ガイドブックが示しているのは、誤りの可能性を明示して出す方法もある、という点です。この記述だけで、職員の確認を省けるとは読み切れません。当社は、公開前に確認する範囲と、住民に示す注意書きを、用途ごとに決めることを勧めます。避難情報や医療のような、生命・安全に関わる内容は、明示して出す対象に入りません。

広報の工程(企画・素材・効果測定)のAI活用は、シティプロモーションにAIをどう使うかに書きました。AIが作った成果物の検収基準を、委託する場合に仕様書へ入れる点は、シティプロモーションの業務委託で扱っています。

5. 第3段の事例:住民に直接出る業務は、出す前に「AIが何を作るか」を絞る

窓口の案内やチャットボットは、職員の確認を挟まずに、住民へ回答が届きます。誤りが出たら、その場で住民に伝わります。ここが3段のうち、確認の設計が最も重い段です。

ガイドブックの事例を読むと、第3段の設計には少なくとも3つの要素があります。事例は、これらを組み合わせて使っています。

要素1(渋谷区):誤りがあり得ることを表示して、確かめる先と人に聞く手段を用意する

東京都渋谷区は、2025年3月から生成AIチャットボットで、行政サービスの手続きや制度の問い合わせに自動で回答しています。利用前に、次の注意書きを表示しています。

質問によっては誤った回答をする場合があります。回答の際に表示されたリンク先もあわせてご参照いただき、回答が正確であるかどうかご確認ください。意図した回答が得られない場合は、質問の仕方を変えていただくか、お問い合わせフォームよりお問い合わせください。 ── ガイドブックに載る渋谷区の表示

注意書きが、誤りの可能性、確かめる先(リンク先)、人に聞く手段の3つを備えています。利用者のフィードバックで、回答の精度を高めているとのことです。

要素2(神戸市):AIに回答を作らせず、決まった答えから選ばせる

兵庫県神戸市は、税に関する電話の問い合わせに、ボイスボットで一次対応する実証をしています(実証中の事例)。ガイドブックによると、生成AIは問い合わせ内容とFAQの紐付けにのみ使われ、回答の生成は行っていません。

回答内容はFAQの中から選択され、ハルシネーションは発生しない。 ── ガイドブックの記述(神戸市の事例のポイント)

[解釈] 「ハルシネーションは発生しない」はガイドブックの記述です。当社の見方では、AIがFAQの別の項目を選ぶ誤りは残り得ます。ただ、住民に届く文章は職員が確認したFAQの文面だけに限られるため、誤りの種類が、「存在しない制度を答える」から「関係の薄いFAQを案内する」へ変わります。後者のほうが、確認や是正がしやすい誤りです。

要素3(千葉県):案内先を、事前に登録した情報に限る

千葉県は、福祉の困りごとを抱えた県民に、生成AIのチャットボットで相談窓口を案内しています。生成AIは、相談者と対話しながら状況を判断しますが、案内するのは、県の相談機関などのデータベース(FAQ)に事前登録した窓口情報です。利用ページでは、氏名など特定の個人を識別できる個人情報を入力しないよう促し、入力データは学習に使われない仕様にしています。本格導入から約1か月で約750件の利用があり、高評価率は約90%、約70%の利用者が、正しい窓口に案内されたと感じているそうです。

観光ルートの提案(長崎県):残った課題も公表されている

長崎県の観光連盟は、利用者の希望から観光ルートを提案する機能を、ポータルサイトに載せています。実証から半年で、延べ6,900人以上が利用しました。ただ、ガイドブックには、行程の移動時間や経路情報が不足している点や、自由入力欄の希望に十分に添えないルートを提案することがある点が課題として書かれています。精度向上のために、開発元と協議中とのことです。

事例から読み取れること

[解釈] 紹介した事例には、回答の範囲を絞る(FAQ・事前登録の窓口)、誤りの可能性と人に聞く手段を示す、のどちらかが見られます。出す前の期間については、ガイドブックに載るスケジュールから、次のように読めます。

  • 岩手県一関市は、2025年1月に職員による運用テストを始め、2025年3月に来庁者向けの運用を開始しています
  • 千葉県のチャットボットは、2024年11月から2025年2月にかけてFAQの確認・登録を進め、試験導入を経て2025年2月に本格導入しています
  • 長崎県の観光ルートは、2025年1〜3月に導入して検証し、3月から実証を始めています

[解釈] 3件とも、住民向けの稼働の前に、職員の確認や試験の期間が置かれています。当社は、住民に直接回答する業務では、公開前のテストを手順に組み込むことを勧めます。

第3段で決めることを、チェックリストにすると次のとおりです。

  1. AIが作る範囲:自由に文章を生成させるか、FAQや事前登録の情報から選ばせるか
  2. 誤りの表示:誤りの可能性があること、確かめる先を、利用前に見える場所に出しているか
  3. 問い合わせ先:フォームや電話を、回答画面から辿れるか
  4. 入力させない情報:氏名など個人を識別できる情報を、入力しないよう促しているか
  5. 見直しの手順:寄せられたフィードバックと誤りを、だれがいつ見直すか
  6. 公開前の期間:住民に出す前に、職員が使って確かめる期間を置いたか

6. 始める順番は「やりやすい順」ではなく、「確認の型が作れる順」で決める

では、どの段から始めるのか。当社の見立ては、第1段から入り、第2段、第3段の順に広げることです。この順は、当社が自社でAIを入れてきた運用の感覚とも合っています。ただし、やりやすい業務から始めると効かない、という点には注意が要ります。この点は、AI導入の着手順で扱いました。

自治体の場合は、次の順で考えると決めやすくなります。

  1. 第1段のうち、使う職員が多く、出力が読めば直せる業務から始める。 議事録の要約、文書の下書きなどです。総務省の調査でも、件数が多いのはこの種の用途です。職員の多くが使う用途だと、「使われていない」状態を抜けやすくなります。「ルールが厳しすぎて使いにくい」という声も聞きますが、庁内で閉じる業務に、住民に出す業務と同じ重さのルールを掛けないことで、減らせます。ガイドブックも、導入後は実際に利用する職員を増やすことが重要とし、即時に使えるプロンプト集や、職員のレベル別の研修を挙げています
  2. 第1段で入力のルールと、直す習慣が回り始めたら、第2段に進む。 広報や回答案は、第1段の延長で始めがちですが、出口が住民です。確認者を分けられる体制があるかを、先に確かめます
  3. 第3段は、参照させる情報が整ってから。 一関市と長崎県は、サービスの選定理由に、AIが参照するデータの整備で職員に大きな作業負荷がかからないことを挙げています。FAQや自庁のHPの内容が古いままだと、AIはそれを根拠に答えます。AIの導入より前に、参照元の整理が要ります

ガイドブックは、大阪市の課題として、生成AIの利用の多くが個人利用にとどまっている点を挙げ、組織全体として業務フローに組み込む必要があると書いています。自庁でも、利用者数に加えて、継続して使う業務が決まっているかを確かめるとよいでしょう。

来年度の予算に載せるなら、最初の1業務は第1段から選び、第3段は「準備の費用」として別に積む形が、分かりやすいと考えます。

7. 庁内ルールと委託:自治体は、総務省のひな形が出発点になる

庁内のルールは、民間の社内ルールと考え方が重なります。ただ、自治体には、総務省が示した出発点があります。第4版では、職員向けの「生成AIシステム利用ガイドライン(ひな形 Ver1.0)」が別添として公開されました。改訂の概要に挙がっているポイントには、次のものがあります。

  • 利用前に、情報政策担当課が指定する研修を受けること
  • 私用デバイスに私的にインストールした生成AIに、職務上知り得た情報を入力しないこと
  • 利用目的に応じて求められる正確性の水準が異なることを意識し、出力結果を確認すること
  • 出力に偏見や差別を含むなど、生成AI特有のリスクが起きたら、報告フォームに記載して速やかに報告すること

入力する情報の扱いは、情報の分類で変わります。ガイドブックには、自治体機密性2では、画一的な約款への同意のみで使えるクラウドサービスで取り扱うことはできない、という整理があります。個人情報を入れる業務は、使うサービスの条件と、庁内のセキュリティポリシーの両方で確かめます。

ガバナンスについて、ガイドブックは、AIの利活用・リスク管理の責任者(CAIO)を明確にする必要がある、としています。また、自治体は利用するサービスの責任範囲を、利用前に整理する必要があるとも書いています。

外部の事業者に委託して進める場合は、成果物の検収基準と生成AIの取扱いを、仕様書や契約に書きます(第4章のリンク先を参照)。

8. 市町村の例:西粟倉村は、ガイドラインを作ってから、マニュアルに簡素化した

導入が進んでいる自治体の事例は、大きな市に偏りがちです。第1段の事例として挙げた西粟倉村(岡山県)は、村の例です。ガイドブックに載るスケジュールが参考になります。

  • 2023年8月:生成AIガイドラインを作成し、様々な作業・業務での活用を開始
  • 2025年4月:「LoGo AIアシスタント(bot版)」を本格導入
  • 2025年5月:第2回の生成AI庁内勉強会を開催(第1回は2024年2月)
  • 2025年8月:ガイドラインを基に、内容を簡素化した生成AIマニュアルを作成

活用事例は、勉強会や庁内チャットで庁内に広げているそうです。[解釈] ガイドラインを先に作り、使いながらマニュアルに簡素化している点は、先に完成形のルールを作り込むより、使われるルールに近づける進め方だと読めます。ただし、これは1つの村の事例です。他の自治体に当てはまるかは、体制と業務量で変わります。

9. よくある質問(FAQ)

Q1: 何から始めればよいですか? 庁内で閉じる第1段の業務から始めます。議事録の要約や文書の下書きなど、使う職員が多く、出力を読めば直せる業務です。入力してよい情報の線を、先に庁内で決めてください(第3章・第6章)。

Q2: 職員が使いません。どうすればよいですか? ガイドブックは、導入後は実際に利用する職員を増やすことが重要としています。即時に使えるプロンプト集と、職員のレベル別の研修が有効と書いています。あわせて、AIに頼りすぎて職員の文章作成や企画立案の力が落ちないよう、AIの出力を評価できる力を保つことも求めています。自治体の方から、「ルールが厳しすぎて使いにくい」という声を聞くことがあります。対策は、段ごとに確認の重さを変えることです。庁内で閉じる業務まで、住民に出す業務と同じ重いルールで縛らずに済みます。確認しすぎない設定の考え方は、生成AIの社内ルールの第4章に書きました。使われない原因が、業務の選び方にある場合もあります(第6章)。

Q3: チャットボットが誤った回答をしたら、責任はだれが負いますか? 法的な責任の所在は、本記事では判断しません。ガイドブックは、自治体は利用するサービスの責任範囲を、利用前に整理する必要があるとしています。契約書や仕様書で、事業者との責任の分担を確かめてください。そのうえで、第5章の6項目を出す前に決めておくことを勧めます。

Q4: 個人情報を扱う業務に、生成AIは使えませんか? 一律に禁止する必要はない、というのがガイドブックの整理です。個人情報を含む場合は、使うサービスの学習への利用、サービス事業者の所在国、利用目的に対する必要最小限の範囲、個人情報保護法上の本人同意の要否などを確かめます。大阪市のように、入力できる範囲を条件つきで定めている自治体もあります(第3章)。

Q5: 予算には何を載せればよいですか? 当社の見立てでは、第1段は利用環境の契約と研修、第3段は参照させる情報の整理と、公開後の見直しの運用が、費用の中心になります。第3段で参照データ(RAGなど)を使う場合、ガイドブックは、複数の事業者から見積もりを取り、価格の妥当性とサービス内容を比べることを勧めています。

10. 当社の支援から

当社は、自社の業務で生成AIを使い、記事の下書きや社内の情報整理を進めています。その運用で気づいたのは、AIに任せてよい範囲を決める前に、「間違えたとき、だれに届くか」を決めておくと、確認の重さが自然に決まる、ということです。本記事の3段は、この気づきを自治体の業務に当てはめたものです。

当社は、自治体から、生成AIの活用について相談を受けています。内容は、申請や問い合わせを受け付けたあとの庁内の事務と、住民向けの問い合わせチャットです。前者は、本記事の第1段(庁内で閉じる業務)に当たります。後者は第3段(住民に直接出る業務)で、確認の設計が最も重い段です。同じ自治体の相談でも、業務によって確認の重さが変わる、というのが当社の実感です。個別の団体名や件数は、ここには載せていません。

11. まとめ:次の一歩

候補の業務ごとに、出力の使い道、入力してよい情報、確認する担当者を書き出します。住民に直接回答する業務では、これに加えて、AIが作る範囲、誤りの表示、問い合わせ先、見直しの担当者を、出す前に決めます。始めるのは、庁内で閉じる業務からです。

来年度の予算検討に向けて、次の3つを1枚にまとめてみてください。

  1. 自課で、いまAIに任せたい業務を書き出し、3段のどれに当たるかを分ける
  2. 第1段の業務から1つ選び、入力してよい情報の線を、庁内で確かめる
  3. 第3段に載せたい業務があれば、参照させる情報(FAQ・HP)が最新かを点検する

AIの導入の進め方、庁内のルールづくり、運用の設計は、AI活用顧問からご相談ください。顧問、コンサル、受託開発のどれが合うかは、AI顧問・AIコンサル・受託開発は何が違うのかで整理しています。


参考文献

  • 総務省・自治行政局 行政経営支援室ほか「自治体におけるAI活用・導入ガイドブック<導入手順編>(第4版)」令和7年12月(取得日:2026-10-24)https://www.soumu.go.jp/main_content/000820109.pdf
  • 総務省「自治体におけるAI活用・導入ガイドブックの改訂について(概要)」(取得日:2026-10-24)https://www.soumu.go.jp/main_content/001045562.pdf
  • 総務省「自治体における生成AI導入状況(令和7年度)」令和8年4月24日版(取得日:2026-10-24)https://www.soumu.go.jp/main_content/001070295.pdf
  • 総務省「令和7年度『地方自治体におけるAI・RPAの実証実験・導入状況等調査』の調査結果の公表」(取得日:2026-10-24)https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu06_02000479.html
  • 総務省「自治体におけるAI活用・導入ガイドブックの改訂版(第4版)の公表」(別添:生成AIシステム利用ガイドライン(ひな形 Ver1.0))(取得日:2026-10-24)https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01gyosei04_02000155.html
  • 自社の運用:当社のAI運用の実例(2026年10月時点)

※本記事は当社の整理にもとづく提案です。法令や契約への当てはめは、団体ごとに異なります。個人情報の取扱いや契約の条項は、庁内の法務担当や顧問弁護士にご確認ください。


最終更新日:2026-10-24/初回公開予定 2026-10-30 著者:後藤晃(デジタルプロモーション株式会社 代表取締役社長)。著書『マーケティングで挑む地域創生』(2025年)、シェア出版『「ゼロイチ」の挑戦 Vol.2』第10章寄稿。駅前・街頭のデジタルサイネージ網「タウンビジョン」を全国展開し、サイネージ・SNS・地域メディアを組み合わせた運用代行を専門に手がける。

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